札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月19日木曜日

圧迫骨折はコモン

1月18日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は札幌徳洲会病院の森利光院長である。テーマは「圧迫骨折はコモン」で,参加者は10名。

診療録を分析した結果、札幌徳洲会病院では半径3kmの医療圏で患者を診ていることがわかったそうだ。

今回のメッセージ「高齢者の圧迫骨折を診てほしい。」タイトルにあるコモンには“common”’と“come on”の意味を込めている。

一般外来における運動器疾患の頻度は10-20%である。札幌徳洲会病院は脊椎骨折損傷を診ている数が日本で第三位。都会型で救急車を断らない病院に多いからだろう。人口は減るが、高齢者は急には減らない。高齢者6名に1名に圧迫骨折が起こる。骨粗鬆症は増加している。有病者は女性で約1,000万人。

治療の目標:死亡率、疼痛の軽減、変形の予防、骨癒合、QOLの維持。臥床安静は必要か?診断は?予後は?ギブス・コルセットは必要か?入院は必要か?この辺は最近議論になっている。既存骨折があるときの診断は難しい。有病者の18%しか治療を受けていない。T1強調画像、STIR画像を用いた中野の基準というものがある。70歳以上で急な腰痛、骨粗鬆症があったら圧迫骨折を念頭に置くこと。外傷歴が不明のことも多い。腰仙部の痛みでも、胸腰移行部の骨折を考える。

骨粗鬆症リスク要因:既存骨折、骨折家族歴、スレロイド使用の3つのみ訊く。3コラム・セオリー(3つの領域に分ける;前方、中央、後方)。圧迫骨折では前方がやられる。ミドルコラムは破裂骨折が多く、腰椎圧壊の危険が高い。

高齢者の排尿・排便障害を診たら脊椎が原因かもしれないと疑う。転倒後の腹痛も圧迫骨折を疑う。
圧迫骨折の随伴症状としてサブイレウス、呼吸器感染症がある。

変形して治癒するとADLが落ちる。圧迫骨折の数が増えるほど死亡率が増える。

治療の原則は「整復」「固定」「早期リハビリ」ということになっているが、前2つは疑わしい。整復しても最終的にはずれる。固定はできない。早期リハビリは重要。強固な固定を行っても骨癒合は高まらない。偽関節の発生率は減らない。経皮的腰椎体形成術は効果がない等が最近の研究でわかってきた。痛みの原因が圧迫骨折であるということを説明し、自然経過を話してあげる(一時期を乗り切れば軽減する)ことが重要である。入院の適否は自宅のトイレに歩けるかどうかで決めている。

まとめ:圧迫骨折はありふれた疾患であるが、見逃しが多い、治療法では意見が分かれるが、患者さんを苦しめてはいけない。(麻薬の積極利用も可)。

講義の後、たくさんの質問が出された。圧迫骨折へのPC医の関心の高さがうかがわれた。(山本和利)