札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月16日月曜日

病院総合医セミナー

2012年1月14日 病院総合医セミナー 京都

病院総合医として期待される医師像と題したセミナーに参加した。

まず基調講演として、石山貴章氏の講演があった 氏は1997年新潟大学卒業し外科入局しその後渡米。渡米中にHospitalistの上司に出会い内科に転向自身もHospitalistとなった異色の経歴を持つ。氏によると、Hospitalistとはオーケストラのコンダクターに例えられると。

アメリカにおいては病棟診療は分業体制が敷かれており、アテンディングドクター(上級医)・レジデント(研修医)Nurse Practitiner・PT・CM/SW・コンサルトドクターなどがチームで患者の治療に当たる。
コンサルトドクターが治療方針のアドバイスをしても、それを患者に適応するかどうかはアテンディングドクターが判断することになる。

つまり、LeadingとManagementを行うということだと。94歳で見つかった腫瘍に対し、抗癌剤治療を奨めるのか?緩和医療を奨めるのか?その方向性(Lead)をさだめ、コンサルト医によるアドバイスを受けながら在宅医の手配から急変時の対応・看取りまでのてはずを整える(Management)
アメリカではホスピタリストはここ10年で30倍に増え、医師数としては、循環器内科医と同数いるようだ(2006年)

次にホスピタリストの育て方について話があった。ホスピタリストによる研修医教育は研修医の満足度が高いという調査結果がある。
そのため、すべての入院患者をまずホスピタリストグループに担当させ、、そこに研修医を所属させ、総合内科を学ぶ機会を増やし、おもしろさを研修医にわかってもらう必要がある。
その研修医には1年に数ヶ月は各科専門科を研修してもらい、サブスペシャルを身につけせる。そうしたシステムを構築することで、総合内科の面白さを実感する研修医が増え、興味を持ち、人数が充足し、研修医が指導医となることで、更に総合内科野面白さを伝える人が増えるという好循環が産まれる。

以上が基調講演内容であった。アメリカでもHospitalistの概念が産まれてまだ10年足らずということが意外であったまたその数が増えつづけており、循環器内科医と同数であるという事実には驚いた。日本でも特に地域ではその需要は莫大にあるのだから、システムさえ構築できればその数は指数関数的に増えるであろう。アメリカで起きたことはその10年後必ず日本でも起こることは歴史が証明している。

その後のシンポジウムでは福知山市立病院総合内科川島先生名古屋第二赤十字病院総合内科野口先生川崎市立川崎病院総合内科鈴木先生筑波大学総合診療科の徳田先生東京医科歯科大学総合診療科大滝先生から、自院での総合内科立ち上げから現在までの状況を10分程度ずつで講演していただいた。

どの病院も250床以上の中から大病院の総合内科のモデルだが、それぞれの病院の特徴があり大変興味深かった。逆に言うと、総合内科医、病院総合医はその病院・病院に合わせた形態での働き方があり、その可能性の奥深さを物語っているのだろう。

その後のフロアからの質問では新たに総合内科を立ち上げるさいに、どのようなことに注意をしたら良いかということが議論になった。

それぞれの病院で何が求められているかが違うため一概にいうことはできないが、共通することは
上司(病院長・幹部クラス)の理解。各科専門科がみたくない患者の受け皿だけに成り下がらない。(主張するところは主張する必要性)どのようなことを目指すのかのグランドデザインを明確にする。等が挙げられた。

その中で出てきた意見で「初期研修はアメリカのクリニカルクラークシップレベルであるので、 その後の3年間(日本でいう後期研修)はすべての医師が(病院総合医のように)ジェネラルに行わないと日本の医療はよくならない。 ジェネラルを経験していない専門医だけを養成しても日本の医療はよくならない。」と言う所が印象に残った。

大学病院での総合診療科のモデルとはやや違う感じであったが、今後の総合診療科・病院総合医の具体的なイメージが徐々に形になりつつあって、大変有意義なセミナーであった。

今後、専門医認定や教育病院認定・プログラム認定・関係緖学会との調整などまだまだ先は長いが、気長にだが着実に病院総合医育成のためのステップを積み重ねていく必要があるだろう。
これからの超高齢化日本社会の医療を支えるのは我々である!(助教 松浦武志)