札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月8日日曜日

4つのいのち

『4つのいのち』(ミケランジェロ・フランマルチィーノ監督:フランス 2010年)というDVDを観た(できれば映画館で観たかった)。

始まりから終わりまで88分間、音楽も会話もなく、自然の音とともに映像が流れてゆく。誰もプロの俳優ではなく、カラブリアの村に暮らす人々が演じている。カンヌ、ヨーロッパ最優秀映画賞を受賞。

南イタリア・カラブリア州の山間の町。山羊飼いの老人。杖をつき山羊の放牧をさせている。咳をしている。炭を使って一人料理をする。夜、寝る前に薬を飲む。野原で排便をする。町民がトラックで売りに来た石炭を買ってゆく。

何やらお祭りのようだ。時代がかった衣装で着飾った村人がラッパの音で行進を始める。老人がいつものようには起きてこない。柵を破って、一部の山羊が逆方向の牧草地へ向う。山羊が(心配して)老人の部屋へ集まる。老人は息絶えていた。人々が棺を担いで葬式シーンとなる。

その翌日、山羊の分娩シーン。墜落するようにして世に出た子ヤギが立ちあがる様子が写される。数分後、ヨチヨチと歩き出し、乳を漁る。

子ヤギたちが遊ぶ様子。少し大きくなったところで、大人の山羊の後ろについて牧草地へ向う。溝に嵌って、取り残される子ヤギ。何とか這い出て鳴きながら群れの後を追う。群れを探し続ける。迷子になった子ヤギ。大きな木の下で眠り込む。

季節は変わり冬。そして草木が芽吹く春。大木が切り倒されて、人力で山道を運ばれてゆく。その木を街の広場の中央に村人が集まって立てる。その木に登る青年。行事が終わるとその木は引き倒される。数十メートルあった木は短く切られて、車で山へ運ばれてゆく。井型に組まれてゆく。その周りを細い木で囲ってピラミッド状にしてゆく。天井から火を入れる。そのまた周りを黒い布で覆う。数人の男性で行う作業が淡々と進む。袋詰にされた炭が村に運ばれてくる。小さな煙突から煙が出てくるシーンで映画は終わる。

変わらない自然、人々の暮らし。オーガニックな命が紡ぐ「人間」、「動物」、「植物」、「炭」という4つの命。地球上に共に生きることの意味を、セリフも音楽も排したシンプルかつ力強い映像で伝えてくれる。(山本和利)