札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月6日金曜日

万里の長城

『万里の長城は月から見えるの?』(武田雅哉著、講談社、2011年)を読んでみた。

著者は北海道大学教授で、中国文学の専門家である。このタイトルから宇宙論かと思わせる。

命名がうまい。スター・トレックに「万里の長城は月から見える」という会話があるそうだが、それは間違いだそうだ。中国で始めて有人宇宙飛行を遂げた飛行士が「見えない」と発言している。長城は狭いうえに不規則であるからだ。宇宙からは不規則なものは観測しにくい。

「月から見える長城」という観念がいつからできたかを、マルコ・ポーロの『東方見聞録』や『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』等を紐解いて追って行く。そして「見える」伝説は時代の変遷と共に4つのステージから成っていると分析している。

その後、中国における「月と長城」の関係が語られる。月から長城が見えるプロジェクトが実行された話が面白い。さて、見えるようになったのか?

文学者が書いた宇宙論とも言えるし、「月と長城」に絞った中国論とも言えよう。(山本和利)