札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月18日水曜日

1月の三水会

1月18日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は13名。大門伸吾医師が司会進行。後期研修医:5名。初期研修医2名。他:6名。

研修医から振り返り5題。病棟、外来で受け持った患者について供覧後、SEAを発表。

ある研修医。放射線科研修で画像全体をみる癖がついた。病棟患者を持たないと楽。88歳女性。ペースメーカー外来で、全身倦怠感を訴える。SSS、心原性脳梗塞、高血圧。肺炎、心不全という診断がついた。治療で改善。施設にもどって即38℃。CRP:5.0。1ヶ月後に退院し、以前の施設に戻る。発熱があるというだけで施設に戻れないというのは不合理ではないか。家族を入れてのカンファランスをもった。介護老人保健施設についての報告。医療保険が使えない。他院の外来を受診すると、施設の10割負担となる検査項目が幾つかある。健康で安価の薬を飲んでいる患者が最適。手のかかる人は置きたくない。スタッフが不安定な患者を診たくないという印象を持った。
コメント:このような患者をどこの施設で内科の医師が診るかが問題になってゆくだろう。

ある研修医。寒い。気温-23℃。国外に居住していた64歳男性。肺がんのターミナル・ケア。糖尿病。ふらつき、めまいで帰国し精査。頭部CTで腫瘍あり。左肺に肺がんを発見された。病状はStage IV。脳にγナイフ治療のみ。脳浮腫にリンデロンを使用し、糖尿病があるためインスリンを使用。入院加療。病室でインターネットをしたい(海外に居る知人と連絡するため)。外出して自宅で喫煙、インターネットをしていた。底冷えがする家で、ターミナルを迎える状況としては不適切であった。背部痛、腹満感。胸水が出現。麻薬を使用して、疼痛対応している。
クリニカル・パール:死ぬ時は自宅というのは短絡的である。 それなりの環境が必要である。

ある研修医。68歳女性。甲状腺癌のターミナル・ケア。頸部腫瘍。気管切開。自宅は寒い、お金が乏しい、夫は病気である、という理由で外泊をしたがらない。疼痛管理はできたが、コミュニケーションが難しい。筆談も難しい。外泊の話も進まない。進行が早く、2カ月で死亡となった。この患者にどんなことができただろうか?

ある研修医。62歳女性。全身倦怠感。眼瞼結膜蒼白。舌乳頭委縮なし。爪の変形なし。Hb:6.3g/dl,MCV:105,徐々に小球化してきている。CFで上行結腸眼があった。術後、食事が摂れず、十二指腸狭窄によるものであった。その後、Hb6.4,MCV 119と大球性貧血となった。フェリチン:1030、ビタミンB12,葉酸:正常。虫卵なし。抗内因子抗体陰性。輸血で当場を凌いだ。最終診断がついていない。何だろう?
コメント:ビタミンB12や葉酸をトライしてみる。MDSはないか。マルクを繰り返す。

ある研修医。糖尿病あり、脳梗塞後にイレウスを起こした78歳男性。脳梗塞後、腹部膨満。心房細動。腹部CTで二ボーを認める。最終的に麻痺性イレウスと診断した。
クリニカル・パール:脳梗塞患者におけるイレウスでは、腸間膜血栓症等を否定する必要がある。
コメント:どういう患者に腸間膜血栓症を疑うべきなのか、が重要である。
ここでイレウスの復習をした。腸管壊死の有無:腹痛増強、発熱、頻脈、腹膜刺激症状、乳酸値の増加、白血球の増加、等で判断する。CTの感度:15-100%、特異度85%。

この時期になって来年度の研修先、就職先が決まってきた(医師が激減している市立病院の内科や教育病院の総合内科)。今回はターミナル症例が多かった。受け持ち症例をエクセルにまとめて提示してもらった中に、複雑な日常疾患がたくさん見られた。(山本和利)