札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年7月6日水曜日

ナニワ・モンスター

『ナニワ・モンスター』(海堂尊著、新潮社、2011年)を読んでみた。

ラクダ由来の新型インフルエンザ「キャメル」がナニワで発生した、いう設定。つい最近起こった新型インフルエンザの経過をそっくりなぞるように話が進んでゆく。

本書は、新型インフルエンザが本流と思いきや実はそうではない。途中から、橋下知事そっくりの知事と官僚とのバトルが述べられていく。新型インフルエンザ「キャメル」の発生という状況下で、ナニワ独立の企てに対して厚生労働省が反撃の機会を待って、経済的打撃というしっぺ返しをする。厚生労働省局長の特別老人ホームの補助金不正疑惑も取り上げられる。ここでルーレットルールなるものを紹介している。各省庁で重大な疑惑が発覚したとき、別の省庁の小さな疑惑を漏出させて、大きな疑惑への関心をそらす手法だそうだ。お得意のAi診断(死亡後の画像診断)についての言及もみられる。法医学教室が中心で行うと、画像も読まず(読めず)、データが活かされないまま埋もれてしまうというものである(確かに読影料がつかなければ放射線科医はタダ働きになる)。著者は死亡時医学検索といっている。

九州の久山町と思われる町の医療活動を紹介している。人間ドック並みの住民健診や住民の医療カルテ集積センターを提案。「メタボ健診で日本国民の健康状態は向上したか」と疑問を投げかける。「検証なき予防医学はただのバカ騒ぎ」と強調。厚生労働省が旗振りをするメタボ健診よりも死亡時医学検索の推進を訴えている。

本書の中で、ある病理医を「滅びゆく医療という物語の筋書きを描くシナリオライター」と言っているが、その病理医は著者のことであろう。ついでに病理専門医制度の問題点も指摘。認定試験の受験資格を難しくした結果、受験者が激減。病理解剖重視と言いながら、解剖経験は75例から40例に半減されたそうだ。

本書で一番言いたいことは、道州制で導入である。日本三分の計。日本を3つの国家に割る。東日本、西日本、関東に、というものである。その心は、官僚に支配された関東中心の政治に決別するためである。

医療について、大胆で参考になる提言を沢山している。かなり共感できるところも多い。(山本和利)