札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年11月1日月曜日

疝気の虫

過日、札幌道新ホールで行われた『立川志らく独演会』に行って来た。ゲストはその師匠の立川談志である。前座(または二つ目)の落語の後、志らくが「紺屋高尾」を熱演。

中入り後、立川談志の登場である。食道がん、糖尿病の療養中とあって、立っている姿も痛々しい。歩くのもやっと、座るのが一仕事といったところである。声がかすれて聴き取りにくいためか、スタンドマイクとは別に胸元にピンマイクを付けている。5分で終わるか1時間やるのかやってみないとわからない状態。場内に緊張が走る。北海道での思い出話から始まり、様々なジャンルのジョークを次から次へと披露していった。途中、頭の中で沢山の情報が走馬燈にように駆け巡るのであろう。ジョークの間に思い出した無関係な話題をついつい挿入してしまう。そして最後は「落語チャンチャカチャン」と題して様々な落語を数秒ずつ繋げて語り、会場の拍手喝采を浴びた。これまでと異なり落語を聴いてもらえることに対する感謝の姿勢が仕草の中ににじみ出ており好感がもてた。短い時間であったが談志の頭の中は落語に関する知識で満ちあふれていることが想像できた。全盛期の落語をもっと聴きたかった。翌日に検査入院が予定されているという。これが、私が観る最後の高座であろう。名残惜しい。

談志の後を受けて、談志の十八番「疝気の虫」を志らくがやってくれた。疝気とはソケイヘルニアであると解説し話は始まった。しかし、広辞苑を引いてみると「漢方で腰腹部の疼痛の総称。特に大小腸・生殖器などの下腹部内臓の病気で、発作的に劇痛を来たし、反復する状態」とある。落語の方は「ソケイヘルニア」でないと話がつながらないのでやむなしか。時事ネタ(流行のラーメン屋から首相批判、等)を入れながらポンポンと話がすすんでゆく。最後は弾け落ちで終わった。

生で聴く落語を堪能できた幸福な時間であった。もう談志の落語を生で聴くことはできないが、その志はしっかりと志らくに受け継がれている。立川流、恐るべし!(山本和利)