札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年11月8日月曜日

地域包括医療の制度と理論

11月5日、松前町立松前病院の八木田一雄先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「地域包括医療の制度と理論」である。

まず自己紹介。1995年自治医大卒業。青森県で地域医療を実践。次に松前町立松前病院の紹介。人口は9272人。漁業、水産養殖業が主。病院1、診療所4、歯科3.高齢者35%。病院の周りには桜がいっぱい。100病床で常勤医8名。診療所の支援もする。3町における唯一の病院で対象人口は16000人。内科系医師は全科診療医と称している。勉強会が多い(松前塾、テレビ会議システム)。松前地域医療教育センターとして研修医を受け入れている。

本論
80歳の女性。息子夫婦と3人暮らし。脳出血、保存的治療。右片麻痺。肺炎を繰り返すので胃瘻造設。自宅療養を希望、というシナリオを提示。昔は、訪問診察、訪問看護、介護のサポートは保健師、介護は家族。今は問題リストを挙げる。これを基にサービス担当者会議。話し合いで決めた導入サービスを決める。退院。在宅療養となる。

超高齢化社会
高齢化とは:65歳以上の高齢者人口の総人口に占める率。2901万人。日本は22.7%。医療費は9.1%。北海道:一人当たり103.7万円。高齢者は循環器系、癌、筋骨格系が多い。一人暮らし高齢者が増えており、認知症を有する高齢者が増加している(250万人)。特別養護老人ホームの入所申し込み者の状況:42万人が待機している。

介護保険制度:8段階に区分される。市町村に申請。訪問調査+主治医意見書。認定審査会で要介護認定をする。
昔;市町村が決める。所得による違い。長期入院。医療費の増加。介護に向かない。という問題があった。
現在:自立支援。利用者本位。社会保険方式。1割の利用負担。2種類。特定疾患16種類。7.4兆円。居宅サービス、地域密着型サービス、等が受けられる。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務;毎月のケアプランを作る。一人39人まで担当できる。家族の負担。緊急時の対応。

在宅療養を可能にする条件:入浴や食事の介護、訪問診療、等。
サービス受給者数の推移:脳卒中、認知症が多い。主介護者は配偶者。子、子の配偶者。

地域包括ケアの5つの視点による取り組み
1.医療との連携強化
2.介護サービスの充実強化
3.予防の推進
4.多様な生活支援サービス確保や権利擁護
5.バリアフリーの高齢者住居の確保

尾道市御調(みつぎ)町の取り組みを紹介した。

地域包括ケアシステムの持つ8つの機能
1.ニーズの早期発見
2.ニーズへの早期対応
3.ネットワーク
4.困難ケースへの対応
5.社会資源の活用・改善・開発
6.福祉・教育
7.活動評価
8.専門力育成・向上
その成果:寝たきり老人が減少する。高齢者本人も家族も安心して在宅ケアを選択することができる。老人医療費の抑制に繋がる。

松前町の取り組み
地域ケア会議を月1回。サービス担当者会議。ケアマネジャー連絡会。グループホーム運営会議。在宅医療;42名。脳卒中後遺症、認知症、骨折術後が多い。臨時往診はできていない。在宅での看とりの体制が整っていない。

実践だけでなく理論や制度について詳細に述べられたので、その点を学生は高く評価していた。(山本和利)