札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年11月10日水曜日

第1回日本PC連合学会 秋季生涯教育セミナーに参加して

2010年11月6、7日の両日、「第1回日本プライマリ・ケア連合学会 秋季生涯教育セミナー」が大阪科学技術センターで開催されました。初日の6日には、福井県立病院ERの林寛之先生と国立病院機構京都医療センターの坂根直樹先生の2講演、7日にはワークショップ全26企画の中から2企画を受講してきました。以下、ワークショップの概要と感想を交えて報告します。

●1日目(11月6日)
講演Ⅰ 15:00~16:30
そんなはずじゃ、なかった…救急地雷回避Tips!
福井県立病院ER 林寛之先生
歩いてくる患者の0.2~0.7%は、とんでもない重症患者が紛れている。胸やけ・胃が痛いは要注意。下壁の心筋梗塞では迷走神経刺激で嘔吐、除脈、心窩部痛を認めることも。Dr.林の30㎝の法則:心臓を中心に30㎝範囲内で痛みがあれば疑う。胸痛のPitfalls:圧迫感LR1.7、冷や汗LR4.6、さらに両肩への放散痛LR7.1を示す。AMIのPitfalls最初の心電図の感度は13~69%しかない。重症だったら、救急車で救命センターに行ってくれればいいのに、予告も無く目の前でバッタリ出会うことも。そんなパニック救急にも負けずに、薬局でのトラブル、一般外来での地雷救急を事前に察知するトリアージ能力、および地雷が爆発した時の救急対応、薬剤使用のPitfallsについて講演頂きました。
僕も大学の教員として学生や研修医の方に話をする機会が少しずつ増えてきましたが林先生の講演内容も講演の進め方や声の大きさ、トーンとても勉強になりました。

講演Ⅱ 16:40~18:10
楽しくてためになる糖尿病教育
国立病院機構 京都医療センター坂根直樹先生
糖尿病は患者教育の病気ともいわれている。しかし、例えば体重を減らしましょう、食事に気をつけましょう、腹八分目にしましょうなど医学的おどしを使って行動変容をせまっても、「時間がない」「食事制限をするとストレスがたまる」と言い訳されることもよくある。これを心理学では「抵抗」を呼ぶ。患者が抵抗を示した時は、指導法を変えるサイン。患者の性格タイプや価値観に合わせた指導が効果を上げる。楽しく患者をやる気にさせる糖尿病教育について、HbA1cを体温に例えたり、糖尿病を駅に例えて自分が今どこにいるのか自覚を促す方法、行動変容のステージと技法について御講演いただきました。
坂根先生がおっしゃっていた「HbA1c外来」にならないように気を付けて明日からの診療に役立てようと思います。

●2日目(11月7日)
ワークショップ①9:00~10:30
只今 予約受付中『外来を愉しむ 攻める問診』
藤田保健衛生大学 山中克郎先生
診断の80%は問診による、10%は身体診察、10%が検査と。攻める問診、問診の技術をみがくことは重要である。最初の3分間で患者さんの心をグッとつかむ、鑑別診断が少ないキーワード中のキーワードを見つける、そしてパッケージで繰り出す質問で鑑別診断をぐっと絞り込む。40代 男性 ミャンマーから帰国。発熱+皮診で受診。しばらくして肺の陰影→Asian Big Fiveマラリア、デング、チフス、レプトスピラ、リケッチアの5つを考える。皮膚症状+肺→膠原病、サルコイドーシス、マイコプラズマ、緑膿菌、リッケチア。…するとリッケチアが浮かび上がる。特に専門外で診断を行う時にキーワードからの展開が有効と。どうしても検査に偏重しがちな自らの診療を反省して、明日からの診療に攻める問診で臨めるよう頑張りたい。

ワークショップ②11:00~12:30
ワークショップ③13:30~15:00
一度見れば忘れないSpPinな身体所見
大船中央病院 内科 須藤博先生
※SpPinとは「特異度(Specificity)の高い所見が陽性(positive)のとき、その疾患の診断(Rule in)に役立つ」という意味の略語。
「お宝はすぐ目の前にある」多忙な日常診療でも、少し注意を払うだけで見えるものが沢山ある。あらかじめ知ること、その上で観察力を磨く。ほんの少しの努力で分かることが沢山ある。須藤先生がこれまで集めてきた症例の画像・動画たくさん見せて頂きました。例えば「爪」について。爪は10日で約1㎜伸びる。テリーネイル、リンゼイネイル、ミルケライン…爪の所見にこんなに多くの名前が付いていること、全身疾患が爪に形、色として影響を与えていることを初めて知りました。身体診察の奥深さ、面白さを感じることのできた講演でした。2日間を通じて、何より自分には「勉強」が必要だと強く感じました。まずマクギーの身体診断学を読みます。(河本一彦)