札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年8月30日火曜日

総合診療

8月29日、札幌市内の病院の職員研修会に招かれ「総合診療について」の講演をした。

総合医の姿勢はまず、「医療の利用者である患者さんの視点に重きを置く」ことにある。そのとき、行政を巻き込んで活動する者は自分たちの医療を‘地域医療’と呼び、入院患者全般を診る者は‘総合医療’と呼び、家族・家庭を中心に診療を行う者はそれを‘家庭医療’と呼ぶこともある。総合医の中でも多少の差はみられるが、そこで共通していることは、自分たち総合医を「日常的な健康問題に対する意志決定の専門家」「切れ目のない継続的な医療の提供者」「身近で協調性が保たれた,統合的,包括的な医療の提供者」「限られた資源を適切に活用する医療者」と規定していることである。

現在、様々な患者さんが自分の抱える問題を診察室に持ち込んでくる。その原因を探ってゆくと、体調の不良の原因が身体よりも家族・職場・コミュニティに起因する事例に多々遭遇する。総合診療に従事する医師は、単に専門分化の対比としての統合する専門家に留まるのではなく、医療以外の分野に越境して新たな知の枠組みを獲得しながら問題解決にあたる専門家でなければならないと思っている。

G.Engelの提唱した生物心理社会モデルを紹介し、総合医の特徴として、患者のニーズに「変容して応じる」こと、「曖昧さを甘受する」ことを強調した。

終了後、総合診療部門のあり方等についてたくさんの質問が出された。多くの一般病院に総合診療部門が開設されることを期待したい。(山本和利)