札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年8月15日月曜日

一週間

『一週間』(井上ひさし著、新潮社、2010年)を読んでみた。

本書は著者の遺作である。1946年、ハバロフスクの収容所。ある日本人捕虜の一週間を描いている。主人公小松修吉は、脱走に失敗した元軍医・入江一郎の手記をまとめるように命じられる。そのときに若き日のレーニンの手紙(レーニンが少数民族の出身であること、革命後彼らを裏切ったことが書かれている)を入江から秘かに手に入れる。この手紙を武器に日本への帰国を企てる。その手紙をめぐって極東赤軍との駆け引きが始まる。主人公は無事帰国できるのか。

芝居の要素や恋愛、濡れ場などの場面も盛り込まれ、読者を飽きさせない。

本書の中で一貫して、終戦により満州国からの撤収の際に、民間人が無視され、停戦条約も締結されぬまま、軍人やその家族の安全確保に奔走した点を鋭く糾弾している。

月曜日から始まり日曜日に終わる一週間を500頁越に綴られている。最後の日曜日は3行で終わる。本書を読むと著者が、どのように人生に向き合ってきたかがわかる。この一本筋の通ったぶれない生き方を見習いたいと思った。井上ひさし読むべし。(山本和利)