札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年8月18日木曜日

医療過誤

『Essential Medical Facts Every Clinician Should Know』(Robert B. Taylor著、Springer、2011 )を読んでみた。

著者は家庭医療学の大御所である。

冒頭、マンモグラフィを受けていた患者が痙攣を起こした事例を紹介している。現在、多くの医療機関でこの検査の際に大量のリドカインのゲルを使用しているが、大量のリドカイン塗布によって、不整脈や痙攣、呼吸困難、昏睡、死を招くことがある。

米国では毎年10万人の患者が、医療事故が原因で死亡しているそうだ。それが入院患者の5-10%に起こっている。正確な診断や治療がなされれば免れたかもしれない死亡が剖検例の5%にみられたという。薬による副作用で救急外来を訪れた数は年間4百万人である。医師自身もその害を受けており、2002年のBlendonらの報告では、831名の医師を調査したところ、その35%が本人または家族が害に遭遇したとある。

本書は、これまで医学の常識と思われたことや警告兆候(red flag signs)について、文献を渉猟し執筆されている。1テーマが約半頁にまとめられ、1~8の参考文献がついている。毎日、少しずつ読むのに便利である。第2章のChallenging current medical misconceptionsを読むと、常識と思い込んでいたことが、文献上は根拠がないとされていて驚くこともある。(山本和利)