札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年8月11日木曜日

やめようスライディング・スケール

『Diane W. Guthrie, et.al.It’s time to abandon the sliding scale. J of Family Practice.2011,60;266-70 』を読んでみた。

インスリンの使い方の啓発論文である。

研修医がICUなどで意識のない糖尿病患者でインスリン治療に関わると、ある一点の血糖値で高い場合に医療スタッフからこの血糖値の修正を求められる。そのときスライディング・スケールを覚えることが多いのだろう。スライディング・スケールは速効型インスリンをそのとき測定された血糖値に合わせて使用する(指示する)やり方である。

このやり方を一般の外来患者に用いるとローラーコースター型の血糖値の変動が激しいコントールになってしまう。本論文でも、折角うまくいっていた小児糖尿病患者がスライディング・スケールを信じる医師に出会って、ローラーコースター型コントロールになった例を紹介している。

IDDMには、2-3日間の血糖値を観察して、責任インスリン(朝食前は持効型、朝食後2時間は朝前速効型、昼食後2時間は昼前速効型、夕食後2時間は夕前速効型)の量を決める方法が一般的である。

速効型インスリンの量はそのときの血糖値で決めるのではなく、これから摂取する炭水化物の総量で決めることを、本論文でも強調している。

何年も前から、「スライディング・スケール」を用いないように啓発が行われているが、いまだにこのような論文が掲載されるということは北米でも十分にスライディング・スケールの危険性が周知されていないということであろう。(山本和利)