札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月21日火曜日

激変!中東情勢

『激変!中東情勢丸わかり』(宮田 律著、朝日新聞出版、2011年)を読んでみた。

本書は、現代イスラム政治の専門家が現在の中東情勢を分析したものである。中東の激変は10年周期で起こるという。

東日本大震災によって原発事故後、火力発電への回帰がすすむことが予想される。その石油の宝庫中東では民主化ドミノ、独裁体制の崩壊が進行している。実際、食料価格の上昇が、エジプト、チェニジア、イエメンなどの性情不安をもたらした。また、当事国の権力者にイスラムの平等思想が欠けていたことも原因であろう。王族の奢侈や腐敗が国民の反感を招いてもいる。

自民党政権から現在まで方針が見えないのが日本の中東外交のようだ。日本の中東政策はその時々の情勢で漂流するという特徴がある。日本は最も中東における石油依存度の高い国である(90%)。日本の石油輸入全体の約30%を構成するのはサウジアラビアであるが、そのサウジアラビアの動静が注目される。王政を揺るがすシーア派(90%)とスンニ派(10%)の対立。民主化要求運動がスンニ派の少数派支配を終わらせる絶好の機会ととらえている。

情報は今やモスクからインターネットで取得する時代になった。現在、様々な火種があり、そのひとつがイラン対イスラエル・米国。戦争勃発の可能性もあるという。

著者は、日本には他国の追従を許さない技術や分野がある(エネルギーや資源の節約、環境保護、観光ノウハウ、水、電力、廃棄物処理、資源リサイクル、交通・運輸、職業訓練、等)ので、それをうまく活用して、中東との友好的な関係を築いてゆくべきであると説いている。

大災害に見舞われた最中に、内輪もめをしている今の日本の政党政治に、長期的な視野に立ったエネルギー政策を構築できるのであろうか。本を読むたびに気がめいってゆくのは私だけであろうか。(山本和利)