札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月1日水曜日

原子炉時限爆弾

『原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島』(広瀬 隆著、集英社、2010年)を読んでみた。

本書のすごいところは、東日本大震災によって原発被害をもたらされた半年以上も前に書かれ、その内容が現実と一致している予言の書となっていることである。メディアで頻用される「想定外」が実は想定外ではなかったという点にある。

原発を考える上で知っておくべき地質学の最低限の知識。地球は生きている、ということ。対流と重力が作用してプレートを動かす。硬い層が動くことをプレート運動という。マントル層の上の方から溶岩のプレートがわき出してゆっくりと地球の表面を動いており、また深いマントル層に戻って沈み込んでいる。ヴェーゲナーが大陸移動説を提唱。分裂と移動、成長して拡大することを繰り返してきた。今も移動が続いており、太平洋プレーチは最も速く動くプレートであり、1年に10cmも動くそうだ。

これまでの原発に関する重要に事項。まず、1979年3月28日、米国スリーマイル島原発2号機でメルトダウン事故の発生。1986年4月26日にチェルノブイリ原子力発電所で原子炉を吹き飛ばす爆発事故が発生。そんなことには無頓着に、民主党政権は2030年までに原発を14基以上新増設する計画を立てていた。一番可能性の高いのは「大地震」に襲われた時の原子炉の機械的な破壊であると予測があるにもかかわらず、日本政府は、大量の死者が出るという、あまりにおそろしい被害が予測されたため、国家くるみでその報告書を葬り去った。

原発震災の被害を誰も償えないという理由で、外国の保険会社は日本との契約を放棄した。
日本は地震多発地帯で4枚のプレートがひしめき合っていて、このような危険地帯は世界中探してもここしかないという。そして日本は地底の激動期に突入した。

本書には、東海大地震が襲い、浜岡原発が大被害を被り、東京・名古屋に大規模な被害をもたらす様子が書かれているが、これは地域を東北に移した以外2011年3月11日の被害にそっくりである。

日本の地盤について。日本は海底が盛り上がって生まれた島である。そして現在も海底火山の噴火が起こり、造山活動が続いている。日本には「強固な岩盤」が存在しない。日本の海岸線にある陸土はほんの数千年前の縄文時代には海水で覆われていたという。

なんとも信じられないことであるが、日本(政府?、学会?)は大陸移動説とプレートテクトニクスを認めなかった、と。建設地を選んでから地質調査をした。日本で正しく地質学を適用すると、原発を建設できる安全な土地がどこにも存在しないからである。現在運転中の原子炉は、すべて改訂された原発耐震指針を満たさない欠陥原発である。改訂された原発耐震指針以前に建設された原発ばかりだからである。

地域医療を再生する前に、日本が消滅してしまわないか心配になってきた。政治が、学会の在り方が問われている。我々ひとりひとりにどのような生活をするかどうかの選択が迫られている(山本和利)