札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月16日木曜日

乳児健診・発達健診

6月15日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は江別市立総合病院小児科の梶井直文院長である。テーマは「プライマリ・ケア医の乳児健診・発達健診」で,参加者は22名である。

<現在的意義>
1955年:疾病の早期発見・早期治療
1990年~:こころの健康
2001年~:「健やか親子21」→育児支援

乳幼児健診の役割
・発達障害の早期発見・支援
乳児健診(先天性疾患、脳性まひ)→1歳6カ月(重度精神遅滞、自閉症)→3歳時健診(中等度精神遅滞、自閉症)→就学前発達相談(注意欠陥多動性障害, 学習障害, 等)

<ポイント>1)子どもの成長には個人差が大きい。2)定期的な経過観察が必要である。3)母親に不安を与えない。4)母子手帳、成長曲線、発達検査(円城寺式・乳幼児分析的発達検査表)の活用。5)十分な事後健診、小児神経科医、児童精神科医に紹介。6)育児支援システムを知っておくことが重要である。
1) 身長・体重・頭囲の成長のチェック。①成長曲線を利用する。頭囲の大きい患者。親も乳児期に頭囲が大きかった。「家族大頭症」(両親の乳児期の写真を見る!)②肥満度曲線を利用する。3歳児健診では重要。+50では肝機能障害がでる。(ジュースを控える)
2) 身体疾患に注意した診察
3) 運動発達についての神経学的検査を取り入れた診察。脳性まひの原因は出生前・周産期が80%。

4か月健診のチェックポイント①頚定、②笑い反応、③追視、④喃語

7か月健診のチェックポイント①寝返り、②座位、③おもちゃの持ち返る、④人見知り、側方へのパラシュート反射

10か月健診のチェックポイント①這い這い、②つかまり立ち、③小さなものを指でつまむ、④イナイイナイバーのまね、前方へのパラシュート反射、聴力検査が重要!(早期に内耳手術が可能である)
いざり這い乳児(shuffling baby)坐ったままいざって移動する。独り歩きが遅れるがその後の発達は順調。家族歴がある(40%)

1歳6か月児健診のチェックポイント①歩く→小走り、②一語文→二語文。

3歳児健診のチェックポイント①片足たち、両足飛び、②三語文→会話。円城寺式・乳幼児分析的発達検査表を活用する。「言葉は知恵の窓」である。

軽度発達の問題→問題の顕在化→学校不適応・心身症→社会への不適応
軽度発達障害児が5歳児になって発見される率が高い。5歳児健診の必要が叫ばれている。
フロアから、「成長・発達に問題がある子が来ない。虐待が隠れていないか。」等の質問がだされた。梶井先生はこれまでの健診業務について、「チームで診ることが大切。スタッフに育てられた。」と振り返っておられた。

次回7月20日は「小児科救急」、次々回9月21日は「小児科感染症」を予定している。
(山本和利)