札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月11日土曜日

チーム医療の構築

6月12日、第62回日本東洋医学会学術集会の中で開催された第27回臨床東洋医学会に招かれ、基調講演「北海道の地域医療の現状とその課題~よいチーム医療の構築に向けて」を行った。

北海道における医療の現場の医師不足を報告した。このような地域には現実に対応できる総合力を持った医師が求められる。地域医療再生の5つの作業仮説を述べた。後半はチーム医療について総論を述べた。不可欠な4要素は「生活者の視点」「目的の共有」「コミュニケーション」「コミットメント」である。

基調講演に続いて、「緩和ケアの立場から」「在宅医療の立場から」「看護師の立場から」「薬剤師の立場から」と題して4名の方からチーム医療における漢方の役割についての講演があった。

緩和医療:久留米大学の恵紙英昭氏(精神科医)
ある末期がん患者の言葉「最期には人がよく見えます。」患者の悔い「美味しいものを食べておかなかった。」を紹介された。西洋薬が効かないとき、六君子湯を氷にするとよい(セロトニン受容体に拮抗する)。スタッフで試食してみた。美味しい。バニラアイスクリームやヨーグルト、杏仁豆腐に混ぜると評判がよい。口の中がすっきりする。吐き気、嘔吐が減る。院外カンファランス(飲み会)を大切にしている。繊細さと鈍感さを併せ持ち、人間力を高める努力が大切である。

在宅医療;大澤誠氏(精神科医)
認知症を専門にしている。特養、グループホーム、老人ホームの嘱託医。BPSD(認知症に伴う周辺症状)のある患者へのサービスについて解説された。生活のしづらさを支えてあげることが重要である。生活者の視点(生活者モデル)が重要である。漢方医学が適している部分が多い。

看護師の役割:飯塚病院漢方外来の小池理保氏。
診察前のオリエンテーション、教育ツールを使って患者を教育する、健康調査票をチェック、診察介助、診察終了後の補足、患者の不安や訴えに関わる(傾聴と医師の言動へのフォロー)、パンフレットの作成・配布、漢方薬試服の観察、電気温鍼の実施、煎じ薬の服用に関わる、副作用への対策、老人施設入所者への関わり、看護教育、他科との連携、他職種との関係。外来の柱に四季折々の模様替えをしている。

薬剤師の役割:近畿大学の森山健三氏。
処方の提案と副作用のモニターリングが重要である。副作用軽減の提案と副作用の回避が必要。医療従事者間での情報の共有。配合生薬での注意。注意が必要な自覚症状。皮膚症状が悪化する生薬。妊婦等に注意が必要な生薬。(寒、熱)(緩、緊)を覚えてほしい。漢方薬の副作用チェックに薬剤師の役割が重要になると思った。

他職種の活動や知識についてお互いに共有し合い、生活者本位に医療を実践することが重要であると再認識させられた会であった。(山本和利)