札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月28日金曜日

複雑系と医療

『Complexity & Medicine The elephant in the waiting room』(Colin J. Alexander著、Nottingham、2010年)を読んでみた。

「医学の問題点:複雑な病気の原因を同定できないこと」だそうだ。

医学には2つの領域がある。科学と技術である。病気の予防と治療が対応する分野となる。予防は目に見えないが、大変重要で利益も大きい。予防をするためには、原因を知る必要がある。冠動脈疾患に関して言うと、治療法は進んでいるが、その原因については多くの仮説があり、原因は不明である。遺伝子解析が進むと解決すると思われたが、現実にはそうならなかった。原因が一つではないからである。感染症などと異なり複雑な病気では、原因が一つのいうことが間違っている。原因と機序とは同じことを意味しない。原因については「なぜ」に答える必要があり、機序は「いかに」に答える必要がある。

科学には仮説が必要である。それがないと検証ができない。科学のプロセスとして演繹があるが、それに十分な論理性はない。仮説を探る帰納と検証する演繹のプロセスを持つ。

研究モデルは4つ。介入研究、コホート研究、ケース・コントロール研究、住民調査である。複雑な疾患については仮説過多が問題である。それぞれに独立したニュートン以降の線形の仮説モデルは不適切である[役に立たない]。感染症は線形モデルでよいが、その他は非線形モデルでなければならない。

カオス理論。病気とはホメオスターシスの破綻である。一般に、ネガティブ・フィードバックが主であり、エラーを防ぐようになっている。逆にポジティブ・フィードバックは不安定となり、有害である。一般に線形であっても、信号を受けてからの反応にタイム・ラグがあるとまれでがなるが揺らぎが起こる。

後半は様々な整形外科疾患を例に挙げて、原因を線形モデルで求めようとしても無理であり、非線形モデルが必要であることを100ページ割いて述べている。(山本和利)