札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月14日金曜日

東大生の論理

『東大生の論理 「理性」をめぐる教室』(高橋昌一郎著、筑摩書房、2010年)を読んでみた。東大生に学外講師として行った論理学の講義についての報告である。面白い!お勧めである。教科書は『理性の限界』を使っている。

まず、男女の三角関係を分析。その関係は8つの組み合わせのいずれかになるという。
「Yは男か女かのどちらかである」は論理的には真ではないそうだ。本書を読むとよくわかる。「排中律」と呼ばれる基本的な法則は「PかPでないかのどちらかである」の表現でなければならない。

これを地域医療に当てはめてみよう。「医師を増やすと地域医療の問題が解決する」も真ではないことがわかる。本書に倣って表を書いてみよう。

ケース/ 医師は専門医である / 医師は地域医療をする
1・・・・・ / ○ ・・・・・・・・・ ○
2・・・・・ / ○ ・・・・・・・・・ ×
3・・・・・ / × ・・・・・・・・・ ○
4・・・・・ / × ・・・・・・・・・ ×

現在、99%が臓器専門医であり、都会の病院志向である。それはケース2に当たり、地域医療は崩壊することになる(総合医が少なすぎてケース4でも崩壊することになる)。医師を増やしてもその医師たちが臓器専門医にしかならないならば、ケース2のままである。よって医師を増やしても地域医療は再生しない(余分な検査や治療が増え、医療費は確実に増えことは間違えない)。

社会的ジレンマの章も面白い。受講者100名に1万円か1千円のどちらかの金額を紙に書く。もし、1万円と書いた人の比率が20%以下であったら、全員にその供出した金額と同額をもらえる。しかし、20%以上の比率であったら同額を没収される。皆が1千円と書けば全員、1千円もらえる。1万円と書いても20名までなら、彼らは1万円もらえる。さああなたならどうする。東大生の結果は如何に。論理学の専門家に同じことを提案した場合の結果はどうであったか。

「囚人のジレンマ」、「ナッシュ均衡」、「パレートの法則」、「マーフィーの法則」の記述も面白い。こんな授業をしなければいけないのだろう。

論理を学んでも現実の問題をうまく解決できるとは限らないことがよくわかる。頭がよいはずの官僚や医師に地域医療の解決を任せてもうまくゆくはずがない。

「うまく方法を選ぶと自分の好きな結論になるよう物事を運ぶことができる」という権力者の論理がよくわかるようになるので、『理性の限界』と合わせて是非、読んでみてほしい。(山本和利)