札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月10日月曜日

患者主体の診断 その2

『Patient-Centered Diagnosis』(Nicholas Summerton著、Radcliffe、2007年)を教室の勉強会で読んでいる。エッセンスその2。

第3章は患者主体の診断に関する原理である。

PC医は画像検査や血液検査をするかどうかを決断する役目がある。

診断的アプローチ
患者よりも機械を当てにし過ぎると失敗する。それよりも患者の症状、既往歴、身体診察が重要である。もちろん、検査も参考にするが。

治療をしながら時間経過をみることも重要である。

PC医が最初に患者と接することになるが、症状によっては一つの診断に絞りきれないこともある。
鑑別しきれない訴えが多いことも事実である。そのような状況では、多くの場合、二者択一を迫られる。治療する:しない、紹介する:しない、重篤か:軽症か。

呼吸器症状で診断をつけるのは、抗菌薬を使うか使わないかを決めるためである。プライマリケアの現場では、疾患が一時的で、自然治癒することも多い。診断を付ける前に治療が始まることもある。家庭医は検査することは少なく、専門医ほど正確な診断をしない。検査をするとしたら、赤沈やCRPなど決断する際に大まかな指針を示すような検査をする。

診断情報として患者を診る。
症状があって始めて診断過程が始まる。家庭医は患者の既往歴、家族歴、職業歴を知っている。
患者主体の診断(Patient-centered diagnosis)は、患者をはじめに診察する重要性を強調する。話し方、習慣、意識レベル・・・症状、等の徴候の重要性を評価する。五感から得られる情報を無視する理由もなかろう。待合室や診察室でよく観察できる。握手したときいろいろな情報を得られる。臭いで喫煙者かどうかわかる。臭う帯下は真菌より細菌感染を疑う。
社会環境や心理的側面も重要である。とは言えそれらの限界を知っておく必要がある。

「データの妥当性」では、3側面を評価する。1)Face validity、2)Predictive validity、
3)Concurrent validity、である。

Face validityは、診断ツールとして適切かどうかを評価する必要がある。スクリーニングに有用であっても、診断には向かないかもしれないし、その逆もありうる。ひどい話、検診で肝機能障害を指摘され、肝生検が正常という手紙を持った患者に遭遇したことがある。

Predictive validityとして知っておく必要があるのは、どんなに検査の精度(感度、特異度)がよくても有病率の影響を受けること, 感度(sensitivity),特異度( specificity)は 専門医にかかった患者からの情報であることが多いこと、尤度比(likelihood ratio)は真陽性率/偽陽性のことであり、この数値が10以上または0.1以下であると確定診断または除外診断に貢献すること、ROC curveは二つの診断法を比較するのに便利であること、Sackettが提唱した the ’rules’ SpPin(特異度が高い検査が陽性のときは確定できる), SnNout(感度が高い検査が陰性の時には除外できる)を覚えておくと便利であること、Symptom pyramidといって、コミュニティから一次、二次、三次医療機関と器質的疾患が増えること、逆にコミュニティのほうは心理・社会的要素が大きく影響すること、などである。

Concurrent validityは、情報の不一致の評価である。
4つのerrorsがある。
1)Asking errors:質問しなかったり、紛らわしい訊き方をしたりした場合。2)Probing errors:患者が不完全またはいい加減な答え方をしたとき、追加の質問をしてしまった場合。3)Recording errors:患者が言っていないことを書いたり、言ったことを書かなかったりした場合。4)Flagrant cheating:尋ねてもいないし答えてもいないのに返事を捏造した場合。(山本和利)