札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年1月19日水曜日

1月の三水会

1月19日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は10名。大門伸吾医師が司会進行。

振り返り5題。今年は「北海道の冬」の厳しさを実感している。

74歳男性。アルツハイマー型認知症。寝たきり。四肢拘縮。
喘鳴、発熱。SaO2:80%で肺炎と尿路感染と診断され、入院となった。全身の汚れがひどく、褥瘡もある。抗菌薬点滴で解熱。血液データは改善。嚥下機能の低下はないが、適宜吸引は必要であった。要介護5であるが、介護が入っていなかった。エアマットも勝手に返却されていた。ネグレクトを心配し娘を呼んで今後のことを相談した。施設入所を提案した。入所まで自宅療養となった。週2回の訪問看護を受け入れてくれた。ミキサー食を提案。

振り返り:家族に働かきかけることにより、患者QOLを上げることができた。キーパーソンである夫人の理解と協力を得るのに腐心したが、最後には夫人の態度に変化が見られた。経済的な面での困難さはなかった。「どんなサービスを利用すればよいのかわからない」という人が意外と多いのではないか。これまでのカンファランスには医師が参加していなかったが、医師が入ったことでコメディカルスタッフが盛り上がった。

クリニカル・パール:「使える人・モノ・制度は何でも使え!」。

42歳男性。多忙。1カ月間止まらない咳。痰。発熱なし。喫煙者。過膨張な肺。肺気腫と診断した。感冒薬処方と禁煙指導。1週間後、症状は改善なく再受診。吸入ステロイドを処方。1ヶ月後、改善ない。マイコプラズマ抗体は陰性。胸部CTで異常なし。
クラリスロマイシンを処方。百日咳抗体(山口株)を依頼したところ、陽性であった。
ここで百日咳のレビュー。

振り返り:慢性の咳は喫煙者では当たり前と考えてしまった。初期に血液検査をしなかった。鑑別診断に「百日咳」に入っていなかった。情報バイアス、感情の転移に注意する。

クリニカル・パール:「慢性の咳の鑑別には百日咳を入れること」「鑑別診断の勉強を怠らないこと」「情報バイアス、感情の転移に注意すること」。

80歳代の女性。吹雪の中を救急車で来院。血尿・排尿痛があり、入院を希望したが、膀胱炎なので入院は不要と話したところ、訴えると言われてしまった。
学会発表をした「コホート研究」を報告。

2年目研修医が2年間の振り返りを行った。事例報告:アルコール臭のある78歳男性が救急車で受診。診察して泥酔と判断し、点滴をして翌朝に診察とした。血液検査の結果、低Na血症。家族から別の市の病院への転院を希望。そこに夫人が入院中。尿路感染症が判明。1週間後、幻視が出現。精神科受診したところ、アルコール離脱、脳委縮による認知症、薬物の副作用と診断。精神科への転院が決定。その矢先、自宅でみたいという申し出があり。

振り返り:ホリゾンの使い過ぎであった。家族との意思疎通が不十分であった。尿路感染症の管理が不十分であった。硬膜下血腫やビタミンB1欠乏の評価が遅れた。最初、単なる泥酔者と考えてしまった。

注意すべき救急受診患者:アルコール飲酒者、ステロイド内服者、糖尿病患者、高齢者、NSAID内服者。沢山の助言が得られた。

クリニカル・パール:「アルコール飲酒者は要注意!」

1年目研修医から学会での症例報告のプレゼンテーション。スライドの作り方、調べ方について沢山の助言がだされた。

和気藹々とした雰囲気の中、夕食に移行し、休憩後、スキルアップ・セミナーに参加した。(山本和利)