札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年3月2日土曜日

地域住民が医師を育てる

31日、東京の都道府県会館で開催された第二回全国地域医療教育協議会総会(第5回全国シンポジウム 地域推薦枠医学生の卒前・卒後教育をどうするか?地域住民が医師を育てる?)に参加した。

 総会前に世話人会が行われた。前田隆浩会長の挨拶後、総会。42大学に会員がいる。

 ■福井県高浜町。住民代表今井宗雄さん、高浜町和田診療所井階友貴医師の発表。

町内の医師不足により医療への信頼の低下が起こった。住民の無理解もあり、医学教育の充実(屋根瓦式教育、インターネット・カンファランス)と住民啓発(広報誌、医療フォーラム)を図った。

住民と医療の架け橋を目指して、200999日にサポーターの会を設立した。メンバーは31名。月1回の定例会を開催。医療者交流会を3回開催。地域医療フォーラムを6回開催。ホームページ、ブログで現状と活動を紹介。啓発用パンフレット、ドラマ仕立ての啓発用DVDを作成。救急受診チャートを作成し町内に配布。「住民の立場でできることを考え実行する」活動の3原則「無理しない、批判しない、消滅しない」地域医療を守り育てる5箇条「関心を持とう、かかりつけを持とう、体作りに取り組もう、学生教育に協力しよう、感謝の気持ちを伝えよう」

教育効果として1)地域医療の楽しさを知った、2)地域医療についてより深い理解が得られた、3)地域医療への関心が増した、4)モチベーションが増した。

 ■岐阜県揖斐川町。行政代表高橋真紀さん、揖斐郡北西部地域医療センター吉村学医師の発表。

地域で開催されている既存の集まり(健康教室、サロン、老人会、自主的な集まり)に、吉村医師と実習にきている学生・研修医を結びつける取り組みを紹介された。キ^ワードは「笑い」と「一緒にやろう」。

医師に講演を依頼したら、学生が講師であった。テーマ「インフルエンザ、認知症、転倒予防、薬の管理、死ぬなら何の病気がいい?」学生が入ることによって、血圧測定や寸劇が導入された。医師や保健師は見守っているが、最後の締めは医師が行う。一緒に食事を摂ると親近感が増す。最後は握手して別れる。とにかく面白い。学生が来ることで元気になった。一緒にやりましょうという気になった。自然に連携がとれるようになったが、地域の重要人物への根回しが大切である。

吉村医師から学生・研修医に教えている内容を紹介。心がけていること「その人を知る、理解する、役割と責任を持たせる、みんなを先生役に引き込む、地域全部が学びの場所、まず経験、その後声かけ、振り返り、患者さんの生活が目に浮かぶように、謙虚な態度、プチ成功体験が大事、無理しないで既存のものを利用」

医学生は100人教えて1人、看護学生は50人に1人、リハビリ学生・介護福祉学生は20人に一人揖斐に戻る、そうだ。種を植えないことには始まらない。学生に任せるにはちょっぴりの勇気が必要である。

 ■徳島県牟岐町。住民代表石本千恵子さん、徳島大学谷憲治教授の発表。

医師不足の現状や地域医療を取り巻く激しい状況を知り、地域医療を守る会を結成。「地域医療を考える」シンポジウムに参加。地域で仕事をする医師への感謝の気持ちを込めて、メーセージボードの作成、ありがとう弁当作り、ケーキ・バレンタインチョコ作り、医師との交流(三味線コンサート、阿波踊り)等々様々な活動を展開。その結果、医療状況がやや改善してきた。

■高知県馬路村・梼原村。行政代表木下彰二さん、町立国保病院渡邊聡子医師・高知大学阿波谷敏英教授の発表。(飛行便の関係で拝聴できず、後ろ髪を引かれながら席を立った)

医療者や行政だけでなく、住民のこのような積極的な活動が地域医療を守るのに重要であることを実感させる発表会であった。(山本和利)