札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年3月5日火曜日

NBMまとめの講義

35日、NBMまとめの講義を行った。

 
1961年 に White KLによって行われた「 1ヶ月間における16歳以上の住民健康調査」を紹介した。大学で治療を受けるのは1000名中1名である。これが患者の受療実態であろう。

一部割愛・・・。

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』に収録されている、診察室では「失行症、失認症、知能に欠陥を持つ子供みたいなレベッカ」、しかし、庭で偶然みた姿は「チェーホフの桜の園にでてくる乙女・詩人」という内容を紹介した。サックスは言う、「医学雑誌の支配的テキストは苦しんでいる人を必要とする。しかし、その人々の個別的な苦しみは認知されえないのである」と。

次にAntonovskyの提唱する健康生成論(サルトジェネシス)を紹介。病気になりやすさではなく、逆に健康の源に注目。健康維持にはコヒアレンス感が重要らしい。1)理解可能であるという確信「こんなことは人生にはよくあるさ」。2)対処可能であるという確信「なんとかなるさ」。3)自己を投げ打つに値するという確信。「挑戦してやろうじゃないか!」

医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介。
研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。

N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論はYou see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。

授業の後半は、ナラティブの話。6つのNarrative要素:Six C”を紹介。以下、映画、短編小説、総合診療外来で出会った事例を紹介し、学生諸君が担当医になったらどうするかを記載してもらう課題を出した。膠原病を考える者から、心理的側面を考慮する者まで様々であった。

学生さんの講義に関する感想文を読むと、大部分の学生さんには好評であった。この授業はNBMについてのまとめとしては有意義であったようだが、一番インパクトがあったのは招聘した患者さん達からの話であった。今の気持ちを忘れず、患者の背景も考慮することのできる素晴らしい医師になってほしい。(山本和利)