札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年5月25日水曜日

時計遺伝子

『時計遺伝子の正体』(NHKサイエンスZERO著、NHK出版、2011年)を読んでみた。

体内時計の中心は脳(視交叉上核)にある。ここが破壊されると24時間のリズムが刻めなくなる。ここに第一の性質を形成する24時間でリズムを刻む「時計細胞」が集まっている(中枢時計)が、実は精巣以外のどこにもあるらしい(末梢時計)。これらの機能を狂わすものに「光」がある。光の影響を受けることで体内時計を調整している(第2の性質)。時計を遅らせる方が進めさせることよう簡単である。また「温度に左右されない」という第3の性質がある。

時間と疾患の関係もいくつか分かってきた。体内時計と血圧との関係では、時計遺伝子を失ったマウスは急激に血圧が上昇する。その原因として血中アルドステロン値が上昇しているが考えられている。
アレルギー性鼻炎は午前7時に、脳出血は午後7時頃に起こりやすいといわれている。がん細胞には増殖しやすい時間帯がある。このような情報が今後の医療に活かされるかもしれない。

長時間のリズムにも対応する細胞があるという。日照時間が長くなると分泌される「春ホルモン(TSHβ)」もある。「カレンダー遺伝子」も発見されている。

ヒトゲノムの解読が完了したが、「どの遺伝子がどのように働いているか」はまだまだ解明されていない。規則正しい生活をすることが大切であることは間違いないが、個々によって健康によい生活パターンがあるのかどうかは今後の研究成果を待たなければならない。それまでは無茶な生活をしないということを心掛けるくらいしかなさそうである。(山本和利)