札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年2月26日金曜日

臨床判断の講義・演習

218日、4年生を対象に臨床入門の一貫として「臨床判断」の講義を3時間行った。

始める前に、4年生前期で行ったEBMの知識の定着率を知るためのテストをしてもらった。「感度」、「特異度」、「検査後オッズ」、「治療閾値」の4つの事項について説明を求めた。対象学生数は101名中66名であり(9時の時点)、正解率はそれぞれ76%75%50%12%であった(正解を知りたい人のために、近々ブログにアップする予定である)。

前半の時間は復習として臨床疫学的診断法、すなわちDL. SackettClinical Epidemiology A Basic Science For Clinical Medicine 2nd Editionを参考にして作った講義資料で、診断パターン・感度・特異度・検査前確率を解説した(3rd Editionが出ているが診断の基本を学ぶには1stまたは2nd Editionの方が優る)。具体的には年齢・性別の異なる3例の前胸部痛患者のシナリオを提示し、学生個々に検査前確率を想定してもらい、提示した感度・特異度・検査前確率を用いて2×2表で検査後確率を算出させた。次にオッズを用いた検査後確率の計算法を解説した。中級編としてHC. SoxMedical Decision Making1988年版)を参考にした講義資料(十二指腸潰瘍の穿孔による腹膜炎症例)を基に、離島の環境を設定した場面(治療するかしないかのどちらか一つしかできない)で治療閾値について解説した(注意:Medical Decision MakingAPCから2007年に出版されたが、中身は1988年度板と全く同一である。一字一句変わりがない)

後半は、腹痛患者のシナリオを提示し(Fits-Hugh-Curtis症候群)診断プロセスを解説した。鑑別診断の仕方に重点を置いた。勤医協の後期研修医である佐藤先生の資料を借りて、ABCアプローチ[Anatomy(解剖)Byoutai(病態)Critical(致死的)Common(頻度が高い)Curable(治療法がある)]を強調した。最後に米国の家庭医療学の本からとった16例のケーススタディを行った。

講義・演習終了後に行ったアンケートによると、症例演習を経験したことがほとんどなく、このような授業に飢えていることがわかった。また、鑑別診断が全く挙がらないことを認識し、診断学学習へのモチベーションを高めた学生が多かった。

 225,26日に学生101名を50名毎に分けて、臨床判断実習を寺田豊助教の指導で行った。下肢筋力の低下を訴える中年女性のシナリオを用いて、模擬患者役を学生にしてもらい、医療面接、身体診察、(患者さんのナラティブを訊き出す)、鑑別診断、検査計画についてグループ討議を重ねながら進めていった。この授業を通して、これまで個々にされていた医療面接・患者さんの思いや身体診察、鑑別診断、検査計画などを統合して考える必要を実感し、5年生から始まる臨床実習へのモチベーションが上がったと答える学生が多かった。(山本和利)