札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年2月2日火曜日

研究取材:第2回近畿ブロック後期研修医ポートフォリオ発表会

研究取材の第5弾である。

今回の取材地は大阪の新梅田研修センター。発表会は土曜日15時開始。後期研修1年目7名、2年目4名、3年目5名がパワーポイントで一人発表7分、討論4分という形式で行われた。聴講者にはフィードバックシートが全員に配布され、後日発表者に返される。

最初にその発表を選んだ理由を述べ、テーマ・事例を述べる発表形式である。内科学会などのプレゼンテーションとはかなり趣は異なる。たとえば、メタボリック症候群の患者への行動療法を導入した例であれば、患者中心の医療の方法としてまとめ直し提示するなどである。ほとんどが家族ライフサイクルに言及し医療家系図を提示している。ここで取り上げられた家庭医に特徴的な視点を挙げると、生物・心理・社会的アプローチ、臨床倫理4分割法の提示、異文化で育った患者・家族へのアプローチ、家族カンファランスの導入、疾病利得などがあった。生物学的問題点としては誤嚥性肺炎、褥瘡、脳梗塞後遺症、アルコール性肝硬変、アルコール依存症、家庭内暴力などが多かった。外来中心の家庭医の発表の多い中にあって、総合医として精神疾患に病院でかかわる医師の発表は、患者さんを見捨てず関わってゆこうという覚悟が伝わり感銘を受けた。1年目の研修医の場合、患者さんの状況やそれへの対応の提示で終わっているものが多かった。2年目研修医になると簡潔に要点をまとめてプレゼンテーションができている。事例は先天性代謝疾患、長期ひきこもり、治療困難な糖尿病を持つ暴力団幹部などであった。スライドに示す参考文献の中に私が翻訳した『患者中心の医療』や拙著『脱専門化医療』があり驚きもした。3年目研修医は院内の質改善のプロジェクトに関わった発表が多かった。全員の発表の終了後、飛び入り参加であるのに、講評をさせられてしまった。「患者中心の医療の方法」の発表が多いのであえて他の領域の取り組みの発表を増やすこと、文献検索をして症例経験と融合させてClinical pearlへ繋げる作業が必要であることをコメントした。最後に学年毎にベスト・パーフォーマンス賞を選んでその授与式も行われた。19時閉会。

この研究会で出会った印象的な言葉:「性善説でアプローチする」「見捨てない」「家庭医にとって脇役は主役でもある」。

翌日、早朝、伊丹空港から札幌へ。

(山本和利)