札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年2月24日水曜日

地域推薦枠医学生の卒前・卒後教育をどうするか?(3)

鹿児島編

休憩を挟んで鹿児島県での取り組みが紹介された。

鹿児島県は南北に長く、離島を入れると600km。全離島数は28でそのうち無医島は14。近々九州新幹線(鹿児島ルート)全線開業が明るいニュース。9つの医療圏があるが、鹿児島に人口の4割が居住し、医師の6割が集中している。鹿児島市とその他の地区では3-5倍の医療格差が生じている。拠点的病院の医師不足が顕在化しており、ある病院では内科37名が21名に減少している。別の病院では神経内科、消化器科が休診となった。県立病院の幾つかは縮小化している。臨床研修医が激減したが、最近やや回復傾向にある(80名を超えた)。鹿児島の特徴として外科医の減少が著しい。

保健福祉部の永山氏から報告。地域枠学生への期待として、義務明け後も県内の地域医療のリーダーとして活躍してほしい。地域枠(義務期間5年と9年の二つあり)と5/6年生枠。奨学金は6年間で940万円。5/6年生枠は2年間で180万円貸与。これまでは毎年2名。現在は地域枠学生22名。以降毎年20名増加。最大114名になる。学生・研修医は最大168名。離島・地域の拠点病院に6年間(離島は最低2年間)。赴任地は県が調整・決定する予定。

鹿児島大学離島へき地医療人育成センターの大脇教授・根路銘准教授より報告。日本全体のことに言及。現在、研修医が偏在しており、医学生の半数が地方から都市部に流出している。特に山陰地方の流出率が大きい。地域枠を持つ大学は61で、学生数は1,064名。他県に依頼する県もある。このままゆくと鹿児島県はピーク時114名になる。2年間研修し、残りの7年間をキャンセル場合の違約金は約1,200から1,400万円と推定される。無策でいると離脱者が多く出ないかという懸念がる。その対策として、繰り返し意識を摺り込むこと、都道府県と大学との連携が重要である(勤務先の調整など)。義務年限後のキャリアについても真剣に考えていかなければならない。

医学生に対する地域医療教育は有効である。地域枠学生は大学の中では少数派なので特別な教育が必要と考えている。実習に際し、元住民との交流を増やし、時間に余裕を持たせ、多くの医療機関を計画に入れ、報告会を行うことを目指したい。知事との面談も重要である。実習を通じて、ロールモデルとなる医師に接して多様なニーズを発見する。地域医療に必要な知識を獲得している。実習が不安を和らげ、初心を再認識し、将来に向けての学習目標が設定できるようになった。問題点として、学生増に伴い実習の場が不足し分散化したことや地元の負担増が懸念される。地域枠の学生には将来、離島へき地・中核病院の総合医、高度医療機関の専門医、研究者、教育者、行政官になってほしい。

その後鹿児島大学2年生の発表があった。不安もあるが想像でしかないので本当のところを知りたい。義務年限終了後、海外・都会での医療を経験し、へき地医療と比較してみたい。大学の授業だけでは初心を忘れてしまう。地域で働きながらどのようにしたら専門医になれるのか不安である。離島で働く医師の「離島に行ってから人間の幅が広がったと患者さんに言われた」という話に感動したと。

最後の総合討論で、

1.      地域枠学生を誰がどのような支援をしてゆくのか、2. キャリアパスをどうするか、3. 支援体制のシステム化の構築、4. 離島・へき地実習の組み入れ、5. お互いの顔の見える関係の構築、等が課題として挙げられた。

フロアから、「何科に進もうともプライマリケア能力を研修2年間終了までに修得させるべきである」「地域枠学生と他の学生と差をつけない、区別しない」という提案があったが、現実としては難しいという意見が多かった(大学では各講座で専門医教育をしているので)。また、「必要な医師数はどうやって求めることができるのか」という質問が出された。

今後の方向性として、「「地域を支えるGPを養成することが重要であるが、ステレオタイプの答えを用意しない。」「単なる医局人事に終わらせないようにしてほしい。」「義務ではなく、地域にゆくと楽しいことがあるのだという視点が大事である。」という意見が出された。同感である!(山本和利)