札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年2月23日火曜日

糖尿病に対する新薬

2月20日、糖尿病に対する新薬の講演会に参加し、秋田大学の山田祐一郎教授の「インクレチン薬を理解する」の講演を拝聴した。インスリンを単に導入してHbA1cは低下してもBMIは逆に増えることもある。生活習慣に介入しないとBMIは低下しない、という話から始まった。以下の4つの観点から講演された。①血糖値を下げる、②糖尿病の成因に応じた治療、③合併症を悪化させない、④患者の視点(アドヘアレンス、金銭的負担)。時間の関係で③、④は省略となった。
インスリンの基礎分泌は血糖値によって調整されているが、一方追加分泌は負荷された食事量に応じて消化管因子(インクレチン)が調整している。その機序としては栄養素が小腸に入るとK細胞がGIPを分泌し、L細胞がGLP-1を分泌する。それによってcAMPが増加(増幅経路)しインスリンが分泌される(この経路は低血糖の危険が少なく食後血糖値を是正するらしい。血糖値が低い時は効果が低く、高い時は効果が高いのが特長だそうだ)。もうひとつ別にグルコースが細胞内のCaを増加(惹起経路)させインスリンの分泌を増やす機序がある。
インクレチン関連の薬剤として、GLP-1受容体作動薬とDPP IV阻害薬とがあり、GIPは体重増加に、GLP-1は体重減少というように相反する膵外作用があるそうだ。
合併症を悪化させないという視点で見てみると、GLP-1は心臓保護作用がり、塩分排泄促進に働くと言われているが、期間が短すぎてエビデンスがあるとまでは言えない。
治療に関しては、SU薬とインクレチンは相乗的にインスリン分泌を促進する。どのような副作用が出るかが今後の課題である!製薬会社主催の講演会であるので、過大評価されている部分が無きにしも非ずであろうから、すぐに飛びついたりせず節度をもって使用するのがよいと思われる。