札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年4月21日木曜日

4月の三水会

4月20日、札幌医科大学において今年度最初の三水会が行われた。参加者は14名。大門伸吾医師が司会進行。初期研修医:3名。後期研修医:5名。他:6名。

最初に、ニポポの研修評価について山本がスライドを使って紹介した。続いて参加者全員が自己紹介をした。新規ニポラー3名。人間科学、分子生物学を研究していた医師。北海道に住むことに憧れていた元刑務官の医師。農学部出身の農村医療に興味を持つ医師。

研修医から振り返り3題。
ある研修医。小さな病院。高齢化率33%。某政治家の力の影響で設備は整った町である。ゆっくり病院業務に慣れているところである。往診は今後入る予定。

症例は強い間欠的腹痛、下痢で受診した6歳の男児。前日から黄色の下痢便。浣腸したら血液混入。便培養、ウイルス検査をされて入院となった。比較的元気であるが、痛みだすと泣き出す。筋性防御なし。6歳としては腸重積の可能性は低くなるが、やはり腸重積を疑い、超音波検査を行った。腸重積と診断し、ガストログラフィンで高圧浣腸を行い整復した。この後、90歳の腸重積症例に出会った(先進部が大腸癌)。
振り返り:腸重積は2歳未満が多い。3兆候は「間欠的腹痛」「嘔吐」「血便」である。3つ揃う場合は10-49%。Common diseaseのrareケースを見逃してはいけない。見逃さないためには浣腸と腹部単純XPが大事。
クリニカル・パール:「年長者の腸重積は、必ず器質的疾患があると考えるべし」

ある初期研修医のSEA。1歳の女児。血便で「出血性腸炎」として紹介された。エコーでtarget sign, pseudokidney signがあり、注腸して最終診断は腸重積となった。紹介の医師の手紙からはじめから腸重積を除外していた。自分で考える習慣をつけることが重要であると思った。
クリニカル・パール:「前医の診断を鵜呑みにしない」

ある研修医。2年目研修で141名を担当し12名が死亡。記憶に残る患者。時間外に発熱で受診した63歳男性。10年前、悪性リンパ腫、MDS。数日前まで肺炎で入院していた。目のかすみとふらつきで受診し、低ナトリウム血症があり、補液で対応。一般外来で輸血と感染コントロールで対応。徐々に全身状態が悪化。あらたに進行胃癌を発見。数か所に転移。告知後、自宅療養を希望。1ヶ月後に再入院。泣きながら胆汁性嘔吐を繰り返す。「無地正月迎えたら一緒にお祝いしましょう」というこの研修医の言葉が患者を勇気づけたようだ。最後は毎日家で過ごした。元自衛官の患者は手で敬礼をしてお別れをした。その後、奥さんが訪ねて来て感謝の言葉を述べられた。「自分はたいしたことをしていないのに、患者さんは感謝してくれた」

このような患者さんに主治医機能を発揮しながら研修を続けている二ポラーを心強く思うカンファランスであった。(山本和利)