札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年4月22日金曜日

「プレゼンテーションのコツ」 医学部1年生講義 

今日は、医学部1年生「医学史」の中の、「プレゼンテーションのコツ」の講義を行った。

「プレゼンテーションのコツ」のプレゼンテーションは失敗することが許されないため、相当気合を入れて準備した。


まず最初に
「今日は眠くならないプレゼンをします」と言い切って、講義に入った。


まず、学生に
「良いプレゼンテーションとは?」と問いかけた。

「簡潔に分かりやすく」
「眠くならない」
「初心者にもわかるような」
などの意見が出た。

次に
「誰のプレゼンテーションが上手だと思うか?」と問いかけた。

「アップルの社長」=「スティーブ・ジョブズ」
「ジャパネットの高田社長」
などの意見が出たが、殆どの人が「分からない」とのことであった。


一般に、日本人はプレゼンが下手だと言われるが、
全国民に広く知られるような印象的なプレゼンを行う人が、
あまりにも少ない証拠なのであろう。

アップル社長の「iPod」のプレゼンは世界的に有名だが、
ソニー社長の「WALK MAN」のプレゼンは見たことない。

日産のゴーン社長のプレゼンは有名だが、
トヨタの社長(名前がそもそもわからない)のプレゼンは見たことない。



講義では、
スティーブ・ジョブズ(アップルCEO)
マイケル・サンデル(ハーバード大学教授)
池上彰(フリージャーナリスト)
高田明(ジャパネットたかた社長)

を例に紹介し、
「どうして彼らのプレゼンは上手なんだろうか?」と問いかけた。

それは、
「何かを伝えようとする情熱があるからだ」と。

今日の自分にも、あふれんばかりの情熱があることを学生に伝え、
講義の本題に入った。



プレゼンテーションの基本は3つ。

1)伝えたいことのストーリー(構想)を紙と鉛筆を使ってまとめる

 パワーポイントを前にして構想をまとめると、どうしても箇条書のスライドが出来る。
 箇条書のスライドは、スライドでもドキュメント(文章)でもない
 「スライデュメント」と呼ばれる最悪のスライドであることを紹介した。


2)伝えたいことをまとめたら、それにふさわしい魅力的な見出しをつける

 見出しは、シンプルに、分かりやすく、簡単に
 レオナルド・ダ・ビンチの「洗練を突き詰めると、簡素になる」の格言を紹介。

 例として、
 アップルがiPhoneを発表したときの「今日アップルが電話を再発明する」
 Googleの創始者の「googleなら1クリックで世界の情報にアクセスできます」
 スターバックスCEOの「スターバックスは職場と家庭に挟まれた第3の場所を創る」
 を紹介した。

 なんて美しい、洗練されたタイトルなんだろう。改めて感動する。


3)魔法の3点ルールを活用する。
 
 三銃士・三種の神器・三冠王など人間は「3」を好む生き物である
 話は3つにまとめると、まとまりが良くなる。

 例として
 今のアップルには三本の柱がある。
 最初の柱はもちろん、マック。
 2本目はiPodとiTuneの音楽事業
 3本目はiPhoneだ。        ―スティーブジョブズ

 人民の、人民による、人民のための政治 ―アブラハム・リンカーン


以上の3点を紹介した。(魔法の3点ルールを地で行くまとめ方)

その後
隣どうしの学生2人でペアになってもらい、
「今自分が最も興味があって、他人に伝えたいと思っていること」を
お互いに3分でプレゼンしてもらった。


やり方は、
スライド4枚で

①   プレゼン全体のタイトル
②ー④ 魔法の3点ルールに従いまとめた魅力的なタイトル3つ。

のようにまとめてもらい、
②-④のスライドは1枚1分で強制的に次のスライドに移るというルールでプレゼンを行ってもらった。


狭い教室で110人55組がプレゼンを行うと、教室はかなり騒然とした状態となった。
そんな中で学生諸君は、声を大きくしたり、身を乗り出したり、
派手なジェスチャーを行ったり、しっかりと相手の目を見たりと、色々工夫していた。
中にはiPhoneを持ち出して、写真を見せながらプレゼンする学生もいた。


----講義で話した以上の、基本を超えたプレゼン技術を身につけているじゃないか!


相手に何かを伝えようという情熱があれば、
ごちゃごちゃプレゼン小細工を教えなくても、自然と身につけていくものである。


最後に
プレゼンが上手になりたければ「練習するしかない」事を伝えた
あの、スティーブ・ジョブズも相当な準備・練習をしてプレゼンに臨んでいる。


「頂点に立つ人は
 努力が他人より多いという程度でも
 ずっと多いという程度でもない。
 『圧倒的に』多いのだ」

という言葉を紹介して、講義を終えた。


110人、一人も眠ることのない90分の講義であり、
最初の宣言通りの講義となった。




学生の感想には、
「大学の講義で初めて眠らずに90分聞くことができました」
など、講師としては非常に嬉しい感想が多かった。
それだけでなく、
最も情熱を注いだ、プレゼンの基本の3点を
きちんと理解してくれていると思われるコメントが多かった。


中でも最も嬉しい感想は、
「スティーブ・ジョブズが来日したようでした」


う~ん、うれしいけど、
ホントは、サンデル教授を意識して講義したんだけどなぁ。
まぁ、いいか。

今度はスティーブ・ジョブズでやりますか。


                  (助教 松浦武志)