札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年10月1日金曜日

激しい腹痛・下痢と血圧低下

「53歳 主婦。去年から2・3カ月に一度の割合で激しい腹痛の下痢のときに嘔吐があり、血圧が急に下がります。
座って至れないほど、具合が悪くなり、トイレで倒れてしまいます。
その状態が30分ほど続き、ようやく起きれるようになります。
何が原因なのでしょうか?
家族がいないときに倒れたらと思うと不安です。
便潜血検査は毎年異常ありません。」

<総合医からの回答>
この経過全体から受ける印象としては、過敏性腸症候群の症状として激しい腹痛の下痢、
嘔吐が起こり、自律神経の一つである副交感神経の亢進により血圧が急に下がるものと考えられます。この過敏性腸症候群は、腸の粘膜に病変がなく、ただ腸の働きが強くなりすぎることによって腹痛や便通異常といった症状が現れる病気です。ストレスやプレッシャーがかかると腸が敏感に反応して症状を起こす、つまり腸の自律神経の不安定な状態といえるでしょう。

便潜血検査は毎年異常がないということですが、年齢のことを加味しますと炎症性腸疾患や悪性疾患を現時点では否定できませんので、最寄りの医療機関を受診し血液や便検査、消化器内視鏡を受けることをお勧めします。

炎症性腸疾患や悪性疾患が否定されれば、過敏性腸症候群に対して有効な内服薬がありますので、それで症状を軽減することができます。便の水分バランスを調整する薬、腸のけいれん・緊張を取り除く薬、便秘に対しての軽い下剤・整腸薬や腸管運動機能調整薬などが有効です。環境やライフスタイルの改善も重要です。また、便秘が主症状の場合は高繊維質のものを食べるとよいでしょう。

血圧が低下する症状がそれでも起こる場合には、医師に相談すると血圧の下がりにくい内服薬やその時の対処法を教えてくれると思います。(山本和利)

2010年9月29日の北海道新聞【学んで直そう】に掲載された。