札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年10月8日金曜日

地域医療特論:産婦人科

10月8日、札幌医科大学の3,4年生を対象に北見日本赤十字病院の水沼正弘先生が行った「地域医療特論」を拝聴した。はじめに産婦人科の齊藤豪教授の導入があった。(次週も小児科の講義が予定されている)。

まず、日本赤十字社の紹介。基本精神は人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、世界性である。北見市はかつて野付牛町といっていたそうだ。北見日本赤十字病院は1935年に開設。5か月で完成。トイレ、水回りが大事。1980年改築。現在、680床。急性期病院として期待されているため、慢性疾患患者が病院から追いやられた。2008年は内科の引き上げにあい苦労した時期であった。4年後には500床で新築病棟が完成予定。25億円事業で北見赤十字病院主体事業を企画している。現在の医師数は91名。研修医は約10名(かつては30名)。当初東大、慶応大学出身の研修医を受け入れていたときの話も出た。職員は約千名。

地域医療連携について。オホーツク医療圏内(青森県と同じ面積)での「地域完結型医療」を目指す。北網地区と遠網地区。地方センター病院が1施設。地域センター病院が3施設。対象人口は31万6千人。北見市は12万7千人。外部に患者が流出しにくい。内科、整形外科は完全紹介制になっている。精査、高度医療が必要な患者のみを診るようにしている。かかりつけ医と専門医との「二人主治医制」を目指している。放射線科医が4名いる。電子カルテ化が進んでいるので、かかりつけ医が北見日赤病院の情報を自分の医療機関から閲覧することができる。また「開放型病院」であり、かかりつけ医が北見日赤病院で手術もできる。救急は小児科の患者が多い。当直時に遭遇した殺人事件の被害者、頭蓋底骨折、解離性大動脈瘤、等の経験談を紹介された。

北見日赤病院はユニセフ・WHO認定施設。産科・新生児医療は圏内で複数の医療機関が対応してくれているので比較的恵まれている。分娩数は減少しているが、ハイリスクの早産、多胎産が多い。頸管縫縮術の紹介。750gの超低出生児の20年にわたる経過を文献考察を含めて報告。最後に医療事故の話。子宮破裂事例とその反省。胎児敗血症事例。全前置胎盤・癒着胎盤の事例。感動的な家族立会分娩を紹介。

講義の後半、具体的な産婦人科の事例は生々しく、産婦人科に関わらない者には普段聞くことができない内容であり、大変参考になった。学生たちのアンケートをのぞき見ると、現場の大変さを感じ取ったようであり、地方でも最先端の医療が実践されていることに驚いているようでもあった。(山本和利)