札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年3月15日月曜日

Narrative Based Medicine in Hakata

313日、九州基本臨床泌尿器科研究会にまねかれて、『Narrative Based Medicine−患者との対話を重視した治療について—』という講演を行った。私の講演の前に、『去勢抵抗性前立腺がんの治療戦略』というエビデンスを中心とした最新の話題が提供された。その中で、緩和医療についても言及され、治療の初期段階から科学的な対応だけでなく、コミュニケーションを重視した取り組みの必要性を演者が強調していたことが印象的であった。

講演ではCommunication 12TIPSとしてLEARN6つのCを、事例を用いながら紹介した。LEARNは古くから米国家庭医療学会で推奨されている方法で5段階の過程を経る。すなわち、L:Listen(患者の抱える問題に共感し理解を示す) 、E:Explain (医師自身が患者から得た情報について、問題のとらえ方を説明・確認する )、A: Acknowledge (相違点と一致点について話し合う )、R: Recommend(推奨する治療法を示す )、N:Negotiate(妥協点を見出す )、である。6つのCは、Conversations(治療としての会話)、Curiosity(患者への興味、無知の姿勢)、Circularity(循環性、11の因果関係で説明しない)、Contexts(患者のみならず自分自身の対応の仕方も省察する)、Co-creation(一緒に新たな物語を創る)、Caution(ステレオタイプな対応をしない)を説明した。今後の医療を展開するのに、EBM(科学)、NBM(物語)、暗黙に知ること(経験知)の3つをバランスよく統合させることが必要であるとして、講演を終えた。懇親会で、若い先生や高齢の先生から、今後の診療をするうえで大変に参考になったという意見を直接聞くに及び、旅の疲れを忘れることができた。(山本和利