札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年3月23日火曜日

日本総合診療医学会:国際フォーラム

322日、東京お茶の水で開催された「あるべき総合医を求めて」というフォーラムに参加した。午前中は「認定制度はこう変わる:日本プライマリ・ケア連合学会による後期研修プログラム認定と専門医認定について」というシンポジウムが行われた。

日本家庭医療学会からは竹村洋典氏(三重大学)、日本プライマリ・ケア学会から伊藤澄信氏(国立病院機構本部)、日本総合診療医学会から山城清二(富山大学)がそれぞれの立場でこれまでの経緯を話された。病院総合医を取得するために合意された点は、総合診療の後期研修の初めの3年間は家庭医研修、後半の2年間は病院総合医研修(内科系急性期病棟、一般外来、運営・マネージメント、教育)をした医師に受験資格を与えるということである。病院総合医資格を修得のための他のキャリアパスは追って検討する予定である。現在、病院総合医研修を1年以上にするかどうか最終的な議論が行われている。最後に三学会認定医検討委員会から石丸裕康氏(天理よろず相談所病院)が話された。当初計画していた5年間で行う病院総合医プログラムの再検討すること(家庭医専門医で修得した部分を引き算する等)、具体的な制度設計(認定方式、施設、制度)などが今後の検討課題である。研修施設としては、一般病床を有すること、救急医療の提供をしていること、総合診療部門があること、研修委員会があること等が必要条件となる。指導医の資格をどうするか(会員、経歴報告書、最近5年間の活動報告、教育方針レポート等)も課題となっている。多くの課題に柔軟な対応が必要であるということでまとめられた。

4名のシンポジストが壇上に上がった総合討論では、「研修施設を選べない自治医大卒業生に対する救済措置はあるのか?」という質問がだされた。一人診療所の研修もインターネット指導があれば認める等、前向きに検討したいという返事であった。「地域診療所、中小病院の医療を支える医師を支援する」のが病院総合医を創る意義である。病院総合医は「総合内科専門医+α」である。2014年までは家庭医専門医またはPC学会専門医が受験資格を持つということが確認された。「病院総合医に成りたいという若い医師が少ない」、「それに対する誘導策はないのか」、「社会的なインセンティブが欲しい」「早く専門医制度を確立することが重要」等の意見が出された。

午後、米国の医師からのビデオメッセージに続いて、Scott A. Flanders氏が「北米における病院医療学の15年」という講演を行った。ホスピタリストの価値を示すデータとして「専門医と比較しても死亡率を下げないで費用、入院日数を低下させた」「ホスピタリストの数は増加している」等を示した。ホスピタリストとは「診療の場で定義される総合医」であり、「研修ではなく実践で定義される最初の専門医」であることを強調された。その後、病院での総合医について、山城清二氏が大学の現状を、郡義明が研修病院の立場から発言された。日本内科学会専門医部会から大生定義氏が総合内科専門医とは「内科を中心に他分野と連携性を基本にしている」とし、日本プライマリ・ケア関連学会とは「協力してやってゆきたい」と発言された。総合内科専門医は「認定内科医の上位に位置づけ」「1/2:勤務医、1/4: クリニック、1/4;大学病院」「場において変容する」「知識、技能が主」「内科の横断的な能力:連携する能力」「教育の担い手」「研究者」「内科を中心に他分野と連携性を基本にしている」等の特徴を持つとまとめられた。聖路加病院研究員であるGautam A. Deshpande氏は、広分野について考えることが好きで、他分野の医師と交流するのが好きであればホスピタリストの素質は十分であるが、日本にそのホスピタリストとして働く場がないことが最大の問題である、と発言された。最後に、臓器別グループを廃止して80名の入院患者を内科系医師全員で診ているという徳田安春氏が野球を例にとって「走ってよし、打ってよし、守ってよし」のイチロー型の医師が地域医療の展開に必要であることをユーモアを交えて話された。

 全体的な印象として、参加者の大部分が病院に勤める医師がであったためか、理想的な病院総合医とはどうあるべきかという議論に始終し、今医療崩壊で苦しんでいる国民のために病院総合医をどのように創っていくかという視点が前面にでなかったことが残念であった。(山本和利)