札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年11月29日金曜日

地域医療の課題と展望


 

1129日、西吾妻福祉病院並びに六合温泉医療センター 折茂賢一郎先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「地域医療の課題と展望-生活モデルと医療モデルである。

地域での事例を紹介。

鹿児島県徳之島の事例。離島医療のサミットに参加。

小豆島で認知症の話をするように言われた。

与那国島の診療所。定年間際の医師が研修者をやめて赴任している。

 

101歳の女性の訪問診療を紹介。在宅の看取りが問題になっている。

地域では生活者としての人と接する。地域全体として認知症の人にどのように接してゆくか。生活という視点で向き合う。

医者にしかできないことは何か?「看取る、死亡診断書を書くこと」

うまくやらないと死体検案書を書くことになる。

 
膵癌末期の患者(抗がん剤治療)の緩和治療。地域の中での緩和治療は難しい。痛みをコントロールし、生きがいを見出す。24時間対応を検討。牧師である夫の話をクリスマス会で聞く。

「生活に近い医療」もある。

 

車いすに乗せて日向ぼっこさせているように見せて、ネグレクトをしている。おむつ、膀胱カテーテルを留置してナースステーションに拘束している。(医療の名の下に虐待をしている)。認知症では居場所を探すことが大切。認知症患者はとても不安な表情をしている。居場所を見つけるとよくなってゆく。色を取り戻す(彩色療法)。音楽療法、園芸療法、等。患者さん達の顔色がよくなってゆくのに驚かされる。

 

これまでの活動を披露された。自治医大卒。29歳で六合へき地診療所長。「村の命を僕が預かる」。現在、2施設の管理者。白衣を着ない仕事が沢山あった。へき地包括医療に触れた3年間。顔が見える活動を続けた。半無医村の認識(必要なときに医師がいない、看とり)。その反省を踏まえて福祉リゾート構想へ発展させた。六合温泉医療センターを建設。メディカル・スタッフが地域へ出向く医療を目指した。そして最前線医療から「支える医療」へ。草津温泉、白根山の近くで対象人口26,000人。観光客年間六百万人。高齢化率>30%の地区で外科系・周産期の救急医療を確保。地域の拠点病院を建設。ヘリポート増設。24時間保育。屋根瓦式研修を導入している。

豊富な写真を提示しながら講義は進んだ。


多職種協同(ピラミッド型)=オーダー型

多職種協働(ドーナツ型)=カンファランス型の後者が地域医療では大事。

 

ICF(国際生活機能分類)の視点を強調。
  

最後に「医療モデル」と「生活モデル」の違いを強調された。

廃用症候群とコミュニティケア.医歯薬出版,2005より  

 
医療モデル
生活(QOL)モデル
目的
疾病の治癒、救命
生活の質(QOL)の向上
目標
健康
自立(自己決定に基づき、自己資源を強化し、社会的生活を送る)
主たるターゲット
疾患
(生理的正常状態の維持)
障害(日常生活上の支障・困りごと)
(日常生活動作能力[ADL]の維持)
主たる場所
病院(施設)
社会(地域・家庭・生活施設)
チーム
医療従事者
(命令・指示)
オーダー型
異職種(保健、医療、福祉、介護等)
(協力・協働)
カンファレンス型
対象のとらえ方
医学モデル
(病因-病理-発現)
障害モデル
(ICF・国際生活機能分類)
適用期
急性期(短期間・cure期)
急性期以外(長期間の可能性・care期)
手法や手段
EBMEvidence-Based Medicine
ケアマネジメント

    

今回は、認知症への取組が新たに加わり、リアリティのある話に学生達は感銘を受けていた。医師のしての存在意義がストレートに伝わる素晴らしい授業であった。山本和利)