札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年11月29日金曜日

病院における総合診療


1125日、勤医協中央病院総合診療・家庭医療・医学教育センターの臺野巧先生の講義を拝聴した。はじめに、twitterで質問を受け入れるシステムを紹介。

用語の整理。

2017年以降は総合診療専門医、内科専門医に統合されてゆく。

総合診療医

・家庭医

・病院総合医

 

「プライマリケアという言葉は、「サービス」を合わらす言葉である。

臓器専門医と総合診療医のどちらになりたいか、を問うた。

 

その後、自己紹介をされ、臓器別専門医(脳外科医)から総合医への転身された経緯を話された。スケート部で東医体三連覇、学園祭実行委員長、POPS研究会で活躍。学生会を創設し、寮生活の改善活動をしたとのこと。

 

脳外科時代(10年半)は、臨時手術、当直業務、緊急呼び出しが主な業務。充実していたが、年をとると大変と感じていた。同窓会にゆくと他の専門医となった医師も同じ悩みを持っていることがわかった。専門以外の知識がないため全科当直が非常にストレスだった。CTMRIで異常がないと薬だけ出して終わり。めまいの患者ではDPPVが一番多いが、脳外科はそれに対応できない(デップス・ホールパイプ法、エプリー法が有効)。頭痛の99%に異常はない。NSAIDsで薬剤誘発性頭痛を作っている。うつ病も見逃すことが多い。外来教育が皆無であった。受けた教育が偏っていることを痛感した。そんなとき、『家庭医・プライマリケア医入門』という本に出会った。総合医とは総合する専門医なのだということがわかった。

 

札幌医大の総合診療科で総合医としての基礎づくりをした(病歴聴取、身体診察など)。学生さんとの学習会:EBM。勤医協へ赴任してから教育の重要性に気付いた。またそこでジェネラリストが必要とされているていることへの驚きと健全なスペシャリズムのあることを知った。

 

今やっていること

・総合診療

・医学教育

・日本PC連合学会

総合診療医と臓器専門医のメリット・デメリットを学生同士で話し合ってもらった。

 

日本の医療情勢。

White KL(1961)Green LA(2001)の論文を紹介。大学病院に入院するのは1000人に1名である。

高齢化率の上昇し、複数の問題を抱えている患者や加齢・廃用の比率増加。総合医、老年医学のニーズが増加する。病院機能の限界。健康増進が重要。複雑系を扱う専門性が必要。Versatilist(十分深い専門性と周辺分野も適度に詳しい)がもう少し増えていかないと日本の医療はうまくゆかない。専門医を活かすためには総合医が必要。超専門医は少人数でよい、相乗効果がでやすい、休みをとりやすい。

 

音羽病院院長の弁

病院総合医を大量生産する。総合医7名を送ったら救急応需率が上昇し、黒字化した。

札幌でも同じことが起こっている。

コストだけでなく、予後を改善させる。

John Fryの「理想の医療供給体系」を紹介。

総合診療医によって成功しているモデルケースが増えている。

病院長は気づいている。

国も気づいている。

総合診療医養成協議会が道庁主催で発足した。

社会保険グループも気づいている。

米国も気づいている。

マッキンゼーによる分析。各専門医数の規制がないのは米国と日本のみである。医師への規制があるのが世界の流れである。不足する科ではインセンティブを賦与している。

米国の現状:コストが他の国の2倍で、GDP17%2008年)。高額な医療機器の使用と外科手技が多いためである。臓器別専門医が多いと医療費がかかる。プライマリケア医の育成を強化する。一方、英国の現状。医療費を8.4%に上げた。プライマリケアを重視し、患者満足度が上がった。

 

女性医師にとっての家庭医:無理なく出産、子育てしながら研修できます。

 

初期臨床研修について

総合診療医は日常疾患のエキスパートでなければいけない。頻度順で。

TOP50の問題で全体の80%を占める。

高頻度疾患を優先順位付きで学ぶ。質高く、深く。

健康増進。

地域医療:ニーズに合わせて。

 

若い学生へ。

総合診療医を目指してほしい。

総合的な基盤をもった専門医に。

両者の協力が重要。

現在、総合診療医のロールモデルは着実に増えている。

 

 

日本の研究医レベルは米国に比較して低い。

総合医が提供する医療は専門医よりもレベルが低いのか?「NO!」である。卒業時に総合診療医を目指すのは数%である。各科の専門医の必要数が検討されていない。最後まで理解がすすまないのは医師側ではないか。ハワイ大学外科町淳二先生の言葉を引用。「日本の医師は、できれば最初の5年間くらいはgeneral physicianとしてのトレーニングを積むべきだ」

 

general physicianになるには、初期研修が重要である。ジェネラルマインドが大事。ローテーションをしただけでは身に着かない。本幹なき枝葉末節教育になっていないか。よい研修とは、病歴と身体診察を重視した研修医向けカンファランスをやっていること。研修目標が明確であること。うまくいっている病院とは、大学の派遣を受けていない、ジェネラルマインドをもっている、教育に力を入れている病院である。臓器専門医と総合診療医が協力することが大事。

 

勤医協中央病院の新しい取り組みを紹介。研修医に合った振り返りカンファランスが重要である。評価、フィードバックをする。屋根瓦式研修医教育やMini-CEX,プロフェッショナリズム教育、ヒアリハットカンファランス、等。

 

先輩からの熱いメッセージであった。山本和利)