札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年11月2日土曜日

地域包括医療


 

 

111日、松前町立松前病院の八木田一雄先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは地域包括医療の制度と理論である。

 

松前町立松前病院の騒動については触れない。

 

地域包括医療(ケア)とは

地域包括ケアシステムとは

30分以内に駆けつける、介護、生活支援、住まい、医療、予防がキーワード。

 

松前町の紹介。8500名、高齢化率40.74%、人口減少。桜まつり、マグロ祭り。

松前町立松前病院:PC医9名、小児科医1名。院外業務あり。築30数年。勉強会の紹介。インターネット会議の紹介。

 

超高齢化社会

高齢化とは:65歳以上の高齢者人口の総人口に占める率。高齢者は循環器系、癌、筋骨格系が多い。7%を超えると高齢化社会。3000万人。日本24.1%。超高齢化社会である。平均寿命は男性79.94歳、女性86.41歳。一人暮らし高齢者が増えており、認知症を有する高齢者が増加している(345万人、10%を占める)。特別養護老人ホームの入所申し込み者の状況:42万人が待機している。施設に入所率4%

 

高齢者の特徴:主訴がいくつもある。うまくくみ取る必要がある。予備力の低下。複数の疾患。合併症がある。感覚機能の低下。多剤服用。認知機能の低下。年金生活者(6から10万円/月)

動けない、食べられない、ボケる。

死因は悪性新生物、心疾患、肺炎、

胃瘻などの人工栄養法をやらない・中止の選択肢がガイドラインとして出された。その結果、胃瘻作成の希望者が減った。

 

入院患者のマネージメントの問題点

不穏・徘徊、譫妄、転倒、嚥下障害、社会的入院(全国で25万人)。

医療だけでは対応できないケースがある。

 

用語の解説:ここでADLDEATHdressing, Eating, Ambulating, Toileting, Hygiene)、IADLSHAFT: Shopping, Housework, Accounting, Food preparation, Transport)を紹介され、それに沿って事例を分析された。これを基にサービス担当者会議。話し合いで決めた導入サービスを決める。ジョクソウ予防のため介護ベッドの導入。精神面のケアをし、退院、在宅療養となる。

 

事例を提示。80歳の女性。息子夫婦と3人暮らし。脳出血、保存的治療。右片麻痺。肺炎を繰り返すので胃瘻造設。自宅療養を希望、というシナリオを提示。昔は、訪問診察、訪問看護、介護のサポートは保健師、介護は家族。今は問題リストを挙げる。

 

1111日は介護の日(いい日、いい日)

介護保険制度[200041日から]8段階に区分される。市町村に申請。訪問調査+主治医意見書。認定審査会で要介護認定をする。

昔;市町村が決める。所得による違い。長期入院。医療費の増加。介護に向かない。という問題があった。

 

介護保険。

現在:自立支援。利用者本位。社会保険方式。所得に関わらず1割の利用負担。保険料は毎月約4972円支払う。高福祉、高負担である。所属する自治体によって負担が異なる。総介護料は8.9兆円。2種類(第1号被保険者:65歳以上、第2号被保険者:特定疾患が対象)。特定疾患16種類。居宅サービス、地域密着型サービス、等が受けられる。訪問調査+主治医意見書(傷病、心身状況、特記、等を記載する。介護の手間、ケアプランに役立てる)、認定審査が必要となる。要介護認定、要支援認定。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務;毎月のケアプランを作る。一人39人まで担当できる。モニタリング、連絡の調整。

 

在宅療養を可能にする条件:入浴や食事の介護、介護に必要な用具、訪問診療、等。384万人が利用。

サービス受給者数の推移:脳卒中、認知症、衰弱、関節疾患が多い。主介護者は配偶者、子、子の配偶者。女性が多い。

 

介護保険を取り巻く課題

1.都市部を中心にした高齢人口の増加

2.認知症高齢者の増加

3.高齢者の独り暮らし、夫婦のみ世帯の増加

4.良質な介護従事者の確保

 

地域包括ケアの5つの視点による取り組み

1.医療との連携強化

2.介護サービスの充実強化

3.予防の推進

4.多様な生活支援サービス確保や権利擁護

5.バリアフリーの高齢者住居の確保

 

地域包括ケアシステムの持つ8つの機能

1.ニーズの早期発見

2.ニーズへの早期対応

3.ネットワーク

4.困難ケースへの対応

5.社会資源の活用・改善・開発

6.福祉・教育

7.活動評価

8.専門力育成・向上

その成果:1)寝たきり老人が減少する。2)高齢者本人も家族も安心して在宅ケアを選択することができる(50%が自宅で介護を受けたい)。在宅死:11.7%である。3)老人医療費の抑制に繋がる。

 

松前町の取り組みを紹介。

地域ケア会議を月1回。サービス担当者会議。ケアマネジャー連絡会。グループホーム運営会議。在宅医療;66名。週2回、1回7-8名。脳卒中後遺症、認知症、骨折術後が多い。臨時往診はできていない。在宅での看とりの体制が整っていない。

 

地域包括医療について、実践者から理論や制度について学ぶ貴重な機会となった。学生さんにはやや難しかったか?(山本和利)