札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年7月26日木曜日

身体所見の再現性

ある医師から「ある身体所見Aが当該疾患にどのくらいの頻度で起こるか」を研究したいという相談を受けた。ここで問題になるのは、「身体所見の再現性」である。ある所見が「ある」とA医師が判断した時、B医師や他の医師が同意するかどうか分からないからである(実は同じ医師が日時を変えて行った時にも、不一致が起こることもまれではない)。そこで医師が異なったとき、一致率をどのように検討すればよいのだろうか。

例えば、呼吸困難患者100名の3音の聴取について、表のような結果が得られたとしよう。

B医師                     A医師


所見(+)
所見(-)
所見(+)
5
5
所見(-)
15
75


所見(+)で一致が5名、所見(-)で一致が75名なので5+75=8080/100=0.8。単純な一致率は80%ということになる。これをsimple agreement(単純な一致率)という。

実はA医師は20%の患者に所見ありと判断し、B医師は10%の患者に所見ありと判断している。その点を考慮すると偶然に所見(+)が一致する率は0.1×0.2=0.02100名中2名は偶然一致することになる。同様に偶然に所見(-)が一致する率は0.9×0.8=0.72100名中72名は偶然一致することになる。そうすると所見あるなしは、2+72=7474%は偶然に当たったともいえる。偶然ではなく一致する割合は26%(100-74=26)しか残されていない。偶然を越えて一致した率は単純な一致率は80%から74%を差し引いた6%ということになる。26%のうち6%一致したので、偶然を越えた一致率は6÷260.23となる。この値をκ値(カッパー値)という。


身体所見の論文にこのκ値を入れると妥当性が高まることになる。(山本和利)