札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年7月19日木曜日

7月の三水会

718日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。大門伸吾医師が司会進行。後期研修医:2名。 初期研修4名。他:7名。
研修医から振り返り5題。

ある初期研修医。地域医療研修の報告。「地域で最期まで生きされるよう」がモットーの道東の医療施設で外来研修、老健施設研修、訪問診察、検診・予防接種等を実施。

ここでは意見交換の場が多い、様々な職種とのカンファが多い、地域からの信頼が大きい、患者さんが生き生きしている、院長がパワフルである等の感想を述べた。

89歳男性。気性があらく、認知症がある。誤嚥性肺炎を繰り返している。息子・娘は無関心で嫁が介護している。食べたいものを食べさせたいが、肉親からの批難が心配であった。医療従事者と相談の結果、思い切って食べさせたら、とても上機嫌になった。「人には食べることが大切である」

96歳男性。ADLは大丈夫。老人施設から自宅へ帰ることを希望。在宅サービスの使用で家に帰したい。娘の不安が強く、火の不始末を心配している事例。考えはそれぞれ。考えをすりあわせ、みんなの意見を調節してゆく。研修を通じて、患者の背景が見えるようになった。また様々な意見をきくことができるようになった。

ある研修医。泌尿器で研修。透析を毎日見ている。透析患者で、肺水腫で亡くなった患者さんを経験。

基礎疾患のない33歳男性。3時間の運動後全身倦怠感。その後外来で「横紋筋融解による急性腎不全」と診断され、入院。BUN:70, Cr:7.48,CRP:1.28ここで腎不全の鑑別。CTで尿路系に閉塞なし。腎生検実施。腎性低尿酸血症が疑われた。急性腎不全では、尿酸値にも注目する必要がある。コメント:運動誘発性腎不全に腎性低尿酸血症が多い。家族歴がある。無酸素運動(トラック競技、サッカー等)が原因。腰背部痛がある。男性に多い[93]

ある初期研修医。外来症例。泣きやまない3カ月女児。入浴後に発熱した65歳男性。ストマ周囲からの出血。ルアーが上腕に刺さって抜けない(異物を残さなければ抗菌薬は不要)。炎天下で仕事をしていて筋肉の痙攣が起こった38歳男性。食事中に誤嚥した89歳男性。角膜外傷(小児には眼帯をしないこと)。

13歳女性。悪心、右下腹部痛。水様下痢。38度。WBC;10400,CRP:4.1,入院せず、その後悪化。虫垂炎に特徴的な腹部所見あり。妊娠していないことを確認し、外科医をコール。診察後、腹膜炎には至っていないと判断された。造影CTで細菌性腸炎と診断し入院加療になった。ここで虫垂炎のレビュー。発熱や嘔吐が疼痛の発生に先行する場合は、通常は虫垂炎ではない。

ある研修医。外来症例。急性中耳炎。人工股関節脱臼。過換気症候群。下腿切創(感染の起炎菌は黄色ブドウ球菌が連鎖球菌である)。

80歳代男性。買い物中に痛みが出現。呼吸困難も出現。前立腺がんの既往。S状結腸がんの既往。Sa2;92%。両下肢リンパ浮腫。乾癬。両下肢の浮腫、発赤著明。CTでCOPDあり、大動脈解離はなかった。Dダイマーが高値。造影CTで肺塞栓症の所見なし。

その後、胸椎多発転移が判明。腎機能が低下し、透析導入となった。造影剤を使わずに大動脈解離や肺塞栓症を除外できないか?造影剤使用に関する危険因子;eGRR<60ml/m、糖尿病、脱水、腎毒性薬剤、等が挙げられる。予防は生食で補液。NSAIDや利尿剤を中止する。予防的透析は意味がない。

ある初期研修医。失神で救急搬送されてきた70歳女性。法事中に発汗、動悸。目の前が真っ暗になった。23分意識なし。血液検査、心電図は異常なし。以前にも玉ねぎの仕分中失神している。降圧剤が変更になってから(ARB+利尿剤)失神になったと本人は思っている。起立時血圧が20mmHg低下するが、失神は起こっていない。

今後、どうすべきか? 起立性低血圧でよいのか?褐色細胞腫等を考慮すべきか?

病棟中心とした研修から、外来や老健施設を中心とした地域医療研修をすることで、患者背景や患者の思いを考察することになるということがわかった。研修する場(もちろん指導医も)の重要性を再認識させられる発表会であった。(山本和利)