札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年7月26日木曜日

医学・歯学教育指導者のためのWS

725日、東京慈恵医大で行われた文科省主催の「医学・歯学教育指導者のためのWS」にファシリテーターとして参加した。
まず文科省から主催者挨拶。WSの趣旨説明、WSのやり方の説明があった。

医学部は3つのテーマを11グループにわかれて2時間半WSを行った(総合診療能力、地域医療、多職種連携)。私が担当したのは「今後の地域医療の在り方を見据えた教育カリキュラム」である。グループ参加者は8つの大学の医学部長や教育センター長、地域医療部門のコーディネーターであった。はじめに各大学の地域医療のカリキュラムについて意見が述べられた。それぞれ大学によって特徴があり、かなり精力的に取り組んでいた。筑波大学や秋田大学は低学年から臨床実習をはじめており、地域医療実習も充実していることがわかった。評価がないと学生は本気で取り組まないという意見が多かった。6年生になると国家試験を意識してか、地域実習に実が入らない学生も少なくなく、国家試験の見直しを求める意見が多かった。

昼休みに、コア・スタッフの反省会が行われた。

午後は、医学部、歯学部それぞれから事例報告が1つずつ行われた。その後、15グループの6分間発表と質疑応答で行われた。

「総合診療能力」

■疾病構造が変わって多様なニーズがでてきた。診療参加型にするための課題を提示。学生の実習時期や診療科間のばらつきがある。

定義;全人的、実践能力、総合診断の能力である。診断学が重要。総合診療を誰が教えるか。医行為を保証する免許制度の確立が必要。厚労省と文科省とのすり合わせが必要。

■臨床実習は各大学:40W+α。若手医師にFDを。大学病院で総合臨床能力を教えられるのか。プライマリケアを担当する医師数を出してほしい。老年医学との関連は?学外にモデル病院を作る。地域医療のお制度化が総合診療へのモチベーションを高める。

■国家試験が近付くと実習に身が入らない。個々の診療科の集大成が総合診療であるとしてよいのか?大学病院だけで実習すべきではない。教え方に斑があるので、FDが必要。

■学生の意識改革(白衣式)を行う。臨床実習をオーガナイズして(各科が協力)、リーダーシップを確立し、FDを実施する。学生のログブック・症例ファイル・ポートフォリオ等による評価記録を充実させる。

コメント;総合診療能力とすると「総合診療医」と誤解されるので、基本的臨床能力をした方がよい。

「地域医療」

■地域医療の定義:へき地だけではなく、地域全体の問題。受診者でけではなく地域全体を診る。「地域枠」入学者のキャリアは、大学・地域病院・自体との連携が必要。地域医療マインドをどう醸成するのか?

■様々な地域医療実習がなされている。地域医療カリキュラムを責任を持って管轄する部署が必要。派遣前の講義・実習ト評価が必要。FD実施。DVDを作成し配布する。国家試験」の変更を要望。

■地域医療教育のメリット;1)病院外の多彩な医療、2)多職種連携を学ぶ、3)プライマリケア、4)より実習参加型になる(学生の資質が顕在化しやすい)。地域に残る医師確保の方策に繋がる。

コメント;世界の傾向は、公衆衛生的な面を含めてゆく。地域診断をさせる。地域医療を教育することと実践することとは別ではないか。まずは無医地区をなくす政策を実現して欲しい。

「多職種連携」

■様々な多職種連携カリキュラムがある。離島実習、救急車乗車実習、病棟実習。PBLに入れる。医療安全。診療報酬体系を教える。キャンパスが離れている。学部間の壁がある。教育目標の設定が難しい。大学間で温度差がある。同一大学内での職種が少ない。

■早期体験実習か臨床実習(緩和ケア、離島実習)でか。丸投げになりやすい。ゴールは何か?医療系以外(ボランティア、民生委員)の連携は不要か?

医学と歯学の連携は重要。高齢者の嚥下障害やがん患者の口腔衛生等。看護学生が司会役をするとうまくゆく。

来賓からのコメントをもらい、最後に高久史麿医学教育振興財団理事長のまとめで終了となった。(山本和利)