札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2012年7月6日金曜日

医学史「戦争と医学」


医学部1年生講義 医学史

 本日の医学史は、「戦争と医学」と題して「ナチスドイツ」と「731部隊」について発表してもらった。第2次世界大戦中のドイツと日本において、戦争捕虜や一般住民に対して人体実験を行ったとされているものである。どちらも自国にとっては、「歴史の恥部」にあたるため、その真相についてはいまだ多くが闇の中である。そのような情報不足の中、両班ともネット情報だけでなくさまざまな書籍にもあたり、しっかりと調べてくれた。

 これまでの発表とは違い、発表の中で「笑い」をとったり「茶化した」画像を入れて発表を面白おかしくするような手法が使いにくいテーマであるため、スライド造りと発表方法の検討には相当時間をかけたようだ。

 どちらの班も背景を暗めの色にし、文字を浮き上がらせ、写真を多数使用し、詳しい説明を口頭で行うという手法を取り入れていた。通常であれば、単調な説明になりがちであるが、多くの学生がスライドの写真に釘付けとなり、淡々とした説明に聞き入っているようであった。

 この場で政治的な対立をあおるつもりは毛頭ない。「戦争」という殺すか殺されるかという極限状態となったとき、人間は通常では考えられないような行動を平気で取れるような心理状態に陥ってしまうということを理解してほしかったのである。しかも、これは何百年も前のことではなく、ほんの70年前の出来事なのである。

 発表終了後の討論の中では、医療倫理について話し合う時間があった。今後医療はますます複雑になり、高度になっていくであろう。その中で「医療倫理」を問われる場面は増えることはあっても減ることは絶対にないであろう。学生から「患者さんのことを第一に考え・・・」「十分な情報提供と同意の下に・・・」という教科書的な模範解答が多く出された。しかし、まだ医療の「い」の字も経験していない彼らにとって、この模範解答は机上の空論でしかないだろう。そのため、松浦から「患者さんのことを第一に考えるとは、この患者さんがもし自分の一番大切な人だったら、自分は今と同じような行動をとるだろうか?という視点で常に自分の行動を振り返ることだ」と説明した。このことを肝に銘じて医学・医療を学んでほしいというメッセージを伝えて授業を終了した。(助教 松浦武志)