札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年9月30日日曜日

指導医講習会


92930日、第8NPO北海道プライマリケアネットワーク指導医講習会にチーフタスクフォースとして参加した。当日、会場である札幌医大で早朝から打ち合わせ。受講者は20名。

まず山本和利の挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利のリードで「アイスブレイキング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。好きな項目には子育て、旅行、サッカー観戦、などが挙がっていた。

続いて尾形和泰氏の主導で「カリキュラム・プランニング」を90分。教育のタキソノミー、一般目標(GIO)、行動目標(SBOs)の説明。RUMBA(real, understandable, measurable, behavioral, achievable)を強調した。その後、具体的な目標を自分の部署について作成してもらった。学習方略、学習環境について言及(人的資源、物的資源、時間、場所の使い方)。ここで、各グループで作ってもらった教育目標をどのように実践するについて方略を考えてもらった。続いて評価の仕方(形成的評価、包括的評価)を紹介。評価しようとするタキソノミーと評価方法を紹介した。最後に厚生労働省のHPを開いてもらい、国の医療教育政策についてコメントを加えた。

続いて、日下勝博氏の主導で「効果的なフィードバック」のセッション。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。役柄になり切っての白熱した演技をする参加者が多かった。

 昼食前に全員で記念撮影。

昼食後、臺野巧氏の主導での「実践的研修評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医、看護師長、看護主任、ソーシャルワーカー、等)を模擬体験した。患者ケア、医学知識、症例に基づいた学習とそれに伴う向上、コミュニケーション技術、プロフェッショナリズム、システムに応じた医療、の6項目について評価をしてもらった。

昼食後、札幌医大松浦武志助教の主導で「EBMの実践」セッションを90分で行った。参加者の事前アンケートによると、二次資料を用いて指導している者が少なかった。そこで、今回は二次資料であるUpToDateDynaMedの使い方に重点をおいて実習が行われた。英語を読むのが不得意な参加者も少なくないので、英語を日本語に翻訳して学習するアプローチを具体的に伝授した(google chromeをインストールし、英辞郎を組み込む作業)。その後、肺炎球菌ワクチンをすべきかどうかを、PICOを作ってもらって、グループ毎でUpToDateDynaMedにアクセスして評価してもらった。「無症候性高尿酸血症の患者にどうすべきか」「娘がインフルエンザにかかった成人男性にタミフル・イナビルを処方するか」という課題が出された。

続いて、寺田豊氏の主導で「SEAを用いたプロフェッショナリズム教育」セッションを行った。なぜプロフェッショナリズムなのか、を解説。「新千年紀のプロフェッショナル憲章」を紹介。モヤモヤ領域をどう教育するか。今回は新たにバリントグループを実践してもらった。正解はない。背中を見せながら振り返ることの重要性を強調。行為中に省察し(独自で)、事後に省察し(チームや同僚で)、未来につなげる(reflection in actionon actionfor action)。事例をSEA形式にして提示。その後、各自にSEAを書いてもらった。感情面に焦点を当てる。各グループの中で興味深い例を一つ選び、それについて討議した。

続いて、場所を変えて「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道庁の杉澤孝久参事が講演された。質疑応答後、情報交換会となり、第一日の日程を終了した。

第二日目は、稲熊良仁助教の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ3つを用いて2人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、各グループの自信作を発表してもらった。

最後は寺田豊氏の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。参加者各自が得意ネタで10分間講義を白板で行い、そのやり方へのフィードバックをしてもらった。慢性下痢、排尿障害、安全なCV挿入法、重症患者の栄養、甲状腺機能亢進症、加齢黄斑変性症、小児の血管確保法、脳卒中、心停止のアルゴリスム、エコーによる気胸診断、副腎腫瘍、下肢静脈瘤の診断と治療、ヘリコバクター・ピロリ菌、透析用シャント、吐血患者のpitfall、急性大動脈解離、チーム医療、川崎病、子宮外妊娠、酸素化について等のテーマで行われた。最後に研修医のプレゼンテーションについてのミニレクチャーを行った。ライムモデル、SNAPPS法、GRIPEモデル、江別式プレゼンテーションを紹介。

 
最後に総括として、参加者全員の感想をもらい、受講者に終了証を手渡して解散となった。

 今回も参加者からの評判は上々であった。次回は教育技法を盛り込みながら、地域医療教育がうまくできるような工夫をしてゆきたいと考えている。(山本和利)