札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2012年9月9日日曜日

内科生涯教育講演会(2)


日本内科学会北海道支部主催の第48生涯教育講演会、午後の部。

名古屋大学今井圓裕氏『ネフローゼ症候群の新しい診療指針』

■コホート研究

・巣状分節性腎症;ステロイド抵抗性が60%、パルス・免疫抑制剤が必要、LDLアフェレーシスが有効、日本人の予後は意外とよい。膜性腎症:60%は緩解する。

・微小変化型は再発しやすい。

・死亡例は感染症が原因。過剰な治療が影響。

・ステロイド糖尿病が起こってしまう。

■診療指針

・タンパク尿>3.5/日(尿たんぱく/尿クレアチニン比>3.5g/gCrでもよい)、浮腫、血清アルブミン<3.0/dl、脂質異常症。

・思ったよりもステロイド、免疫抑制剤が長期に使われている実態が判明した。

・病態機序としてoverfilling仮説が有力。遠位尿細管でのNa再吸収が亢進。

・治療は、塩分制限:6g/日以下、利尿剤の治療、アルブミン静注は可能な限り避ける、RAS阻害薬を使用。スタチンを使用するかどうかは腎症のタイプによって異なる。

DVTの予防のためにワーファリンを用いるが、アスピリンについては意見が分かれる。

・膜性腎症の10%に悪性疾患がある。IgGの沈着、足突起のフォスホリパーゼに抗原抗体反応がおこる自己免疫疾患である(日本人では50%)。抗体を減らせば治る。日本人はタンパク尿が少ない。ステロイドパルスは行わない。シクロスポリンを用いる。

・シクロホスファマイドを使用すると、膀胱がんが増える・

・肺炎球菌ワクチン使用、結核のスクリーニング、ニュモシスチス肺炎予防にST合剤を集に2回投与。

・微小変化群:ステロイドが有効だが、パスル療法は不要。再発が多い。

・膜性増殖性腎炎:HCVが関与。確実な治療法はない。

 

九州大学高柳涼一氏『副腎疾患の最近のTopics

■原発性アルドステロン症は高血圧の3.3-10%

・スクリーニングは安静30分後のレニンとアルドステロンを測定。PAC/PRA>200で判定。

Kチャンネルの体細胞遺伝子変異があることが判明。

■副腎不全

・治療はコートリル朝15mg、夕10mgが一般的。徐放錠が開発された。体重が低下し、血圧が低下した。

■急性副腎不全

・原因はストレス、ステロイドの中断、感染症[6375]

■褐色細胞腫

・悪性:10%、副腎外:10%、家族性:10%。MIBG10%が陰性。

・遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群

コハク酸脱水素酵素の遺伝子変異を発見。高率に悪性化しやすい。2030%が遺伝性であろう。転移がないと悪性・良性の区別がつかない。

■副腎偶発腫瘍

・非機能性;50%。直径>3cm、副腎シンチ取り込み抑制は悪性の可能性が高い。

subclinical Cushing症候群

70歳にピーク。女性に多い。肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常を伴う。術後の改善率は60%である。骨折有病率はオッズ比7.3。手術群に悪化例はないが、非手術例では糖尿病、高血圧が悪化している。手術の長期予後はよい。
(山本和利)