札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年9月19日水曜日

緩和ケアの基本(3)

919日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の小林良裕先生である(3回シリーズの最終回)。テーマは「緩和ケアの基本」で,参加者は15名。

今回は、「疼痛以外のマネジメント」である。

症例検討3題。

60歳代女性。乳がんによる骨転移。やせが著しい。オキシコンチン40mg×2、ロキソニン180mg 3×を内服。腰椎転移が判明した。

1)疼痛緩和における薬物はどうするか?

・アセトアミノフェン4gまで使用できる。2400mg4を処方。

・ケタミン(唯一エビデンスがある)。50mg-200mgを持続静脈注入。

2)非薬物治療をどうするか?

・コルセット固定(ADLが制限される)

・放射線治療 30Grey:70%に奏功する。しかし、時間がかかる(すぐ効かない)。

3)呼吸困難感(呼吸不全はない)と画像の増悪に対して?

・モルヒネ:エビデンスはない。呼吸回数を減らす。痛みと同様に使用。吸入のエビデンスはない。

・抗不安薬(ジアゼパン):緊張緩和、呼吸数は低下する。

・コルチコステロイド

・酸素投与でよくなる患者さんもいる。

・鎮静が必要なこともある。

・呼吸困難感(自覚症状)と呼吸不全(SpO2の低下)を区別すること。延髄の呼吸中枢が関与。アセスメントをすること。

70歳代男性。悪性リンパ腫。化学療法+放射線療法。殿部痛。ビリビリしびれる。オキシコンチン40mg×2、ロキソニン180mg 3×を内服。

1)しびれを評価し、薬物はどうするか?

・神経性疼痛ではないか。坐骨神経由来のしびれであった。抗けいれん薬が効く。リリカ、ガバペンが第一選択である。リリカの方が切れがよい。よく効く。副作用は眠気と浮動性のめまい。リリカ25mg分1から始める。300mgまで増量可。

2)倦怠感の出現には?

・身体的異常を除外する。

・コルチコステロイド(リンデロン):一日1回内服でよい。朝内服(不眠の原因になるから夜は避ける)、Naを貯めないので、胸水・腹水があっても使いやすい。

・酢酸メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH):600mg-1200mg/日。

・アンフェタミン(リタリン)は、今は使えない。

・心理療法、音楽療法、アロマテラピーなど。

60歳代男性。胃癌によるがん性腹膜炎。アセトアミノフェン2400mg、オキシコンチン10mg2、ノバミン3T3.じっとしていられない(アカシジア)。謳気、嘔吐が強い。

1)謳気、嘔吐を評価し、薬物はどうするか?

・オランザピン(ジプレキサ)が著功した(世界的に注目されている)。2,5mgで開始。半減期が長い。高血糖に注意。

・サンドスタチンが便利。3Aを持続皮下注入。

■便秘

・センノサイド、カマ。ラキソベロンは耐性がつきにくい。

■高Ca血症

・脱水の補正、ビフォスフォネート、ステロイド、エルシトニン

■せん妄

・原因の除去

・セレネース、リスパダール

■輸液

5001000ml/日に控える。

■鎮静

・鎮静水準(深い、浅い)と鎮静方法(持続と間欠)を組み合わせる。

・倦怠感と呼吸困難感が最期まで残ることが多い。

・ドルミカム10mg+生食100mlを点滴する。耐性が起こる。深い鎮静にはフェノバールの持続皮下注入を選択する。

今回は、二人1グループになって話し合いをし、意見を出し合った。事例を中心に話してもらったのでわかりやすく、即使える実践的な講義であった。(山本和利)