札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年9月28日金曜日

江別市立病院の総合内科カンファランス

928日、藤田保健衛生大学の植西憲達先生を迎えて行われた総合内科カンファランスに参加した。参加者20名。

症例検討として、『数か月前から起こった呼吸困難・浮腫を主訴に救急外来を受診した80歳台女性』を提示。両下肢の浮腫、呼吸苦、尿量の減少、右眼の腫れ、があった。

ここで植西先生が浮腫の病態を挙げた。

                全身性                    局所性

・静水圧上昇    心不全、腎不全

・浸透圧低下    アルブミン低下

Permiability亢進  敗血症、血管拡張剤    angioedema, 炎症

カルシウム拮抗薬、NSAID,ステロイド、漢方薬(甘草)も原因となること、鑑別に心膜炎を忘れないこと。High output failure(貧血、甲状腺機能亢進症、脚気)も。

高齢者の原因は複数のこともある。甲状腺機能亢進症が原因であれば、心房細動で発症することが多い。

呼吸数、呼吸の大きさ、貧血、頚静脈、甲状腺、肺音、腹水、末梢血管拡張(肝臓疾患の感度が高い)を知りたい。

身体所見:BP;112/72mmHg, HR;95/m, Sp2;95%, RR:22/m, BT;36.8℃、JVP;不明、no goiter, lung: clear, heart; no murmur、下肢にSlow-pitting edema(+)、非常に背中が曲がっている(右眼の浮腫の原因:右下で寝るから)、(逆流性食道炎を起こしやすい)

ここまでで可能性があることは

「胸郭変形」と「薬剤」である。

検査(抜粋)

Hb:8.8, TP:6.1, Alb:2.6, ALP;761, AST;38, ALT:24, LDH;424,K:3.2, CRP:3.0HbA1c:5.6CPK:264, CK-MB;18, toroponin I;0.05low T3 stateHBeAb(+), HBAg(-)

pH;7.49, pC2;33.2, p2;75.2

ECG;PVC(+),AMI所見なし(Kが低いので補正すべき)

貧血の検索が必要である。アルブミンが低い。

胸部XP;胸骨骨折が疑われる所見あり。(骨粗鬆症の可能性があるが、転移がないか?)

CT:肋骨骨折がある。胸椎圧迫骨折、心拡大、心のう水(+)、胸水少量。肝硬変所見あり。

植西先生が挙げた問題点と対策

#1 dyspnea, edema

・薬剤の中止、SpO2モニター

・利尿剤投与は全身状態をよくしてからでよい。

#2 Anemia

・フェリチン、ビタミンB12eGFR,便潜血→消化管内視鏡

#3 Fructure, Thoracic deformity

・治療

・ビタミンD

<経過>

・利尿剤で改善

・内視鏡で蠕動障害あり、アカラジアを疑う所見というコメントが返ってきた。抗セントメレア抗体が陽性であった。皮膚粘膜所見なく皮膚筋炎は皮膚科で否定された。

・骨折の手術後、食事のつかえ感は軽快し、アルブミンも上昇し、浮腫も軽快し、4ヶ月後退院となった。

<総合評価>

・骨折の影響が大きいと思うが、複数の要素が影響したと考えたい(Hiccum’s dictum)。

・高齢者ではよく遭遇する。

 

<寄り道談話>

□その1:少量の酸素投与でSpO2が改善する場合、CO2が溜まっていることが多い。一回換気量が小さいから1Lの酸素でも影響が大きくなるから。

PaO2, FO2は平均気道内圧が関係PaCO2は分時換気量が関係。

□その2;ALP上昇+normalγGPTの原因

・骨(骨折、骨軟化症)

・肝臓疾患(膿瘍)

PBC(γGPTも上がる)

□その3多発性骨髄腫の4つのno

脾腫(-),骨シンチ(-), ALP 上昇(-),fever(-)

□その4:IVCが相関するもの

CVP

・右房圧

・ただしJVPとは相関しない。

□その5:低酸素では肺血管は縮む。

□その6:梅干し1ケに塩分2g。

□その7:Limited screloderm

Calcinosis

Raynaud

Esophageal deformity

Sclerodactylia

Telangiectagia

□その8:Scleroderma GI

・腸の蠕動低下

・食道炎

・腸管毛細血管拡張

NOMI

奇をてらうことなく、自然な論調で話が進み、かつ病態生理を駆使した素晴らしいカンファランスであった。(山本和利)