札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年8月25日土曜日

江別市立病院の総合内科カンファランス


823日、名古屋大学の鈴木富雄先生を迎えて行われた総合内科カンファランスに参加した。

症例検討として、『関連する既往のない80歳台女性が、3年前からの序々に悪化する間欠的頭部違和感を主訴として外来を受診した』事例を提示。

ここで鈴木先生から学生、研修に質問し、話を進めてゆく。慢性硬膜下血腫、片頭痛、脳腫瘍、脊髄腫瘍、アルツハイマー病、頸部疾患の可能性が挙がった。

高齢者と間欠的がキーワード。

「家族構成、痛む部位、頻度、増悪・寛解因子、随伴症状、既往歴、薬剤歴が知りたい。」

事例は、23年前に間欠的な頭部違和感が出現。仰臥位安静で改善。座位で悪化。

研修医が思いついた疾患:「頸部の疾患、起立性低血圧、低髄圧症候群、BPPV,偽痛風、髄膜炎、脳血管の狭窄」

詳細な病歴:頭部違和感は座位で読書、手作業で出現する。安静仰臥位安静10分で改善。もやもや、だるい感じ、全身倦怠感、放散痛なし。眠気を伴う。症状が出現すると何もする気がならない。起床直後、夕方に出現する。

「姿勢が問題なのか、作業が問題なのか」「日内変動が激しい?」

陰性所見:めまい、拍動性の頭痛、立位で出現しない、首の動きと無関係、眼前暗黒感、動悸、胸痛、頸部痛、両肩痛、発熱、関節痛、

「感染症や炎症性疾患ではない」という印象である。「座位で症状が悪化し、立位ではでない」という点で、解剖学的な違いを検討したが、いまひとつ明確にならない。

既往歴:未破裂動脈瘤、腰痛、脂質異常症、内服:NSAIDs,クレストール

身体所見:意識清明、やや肥満体形,座位BP;113/63mmHg,HR;56/m,RR:12/m ,SaO2:96%、他に特記すべき所見なし。

検査は「電解質、甲状腺ホルモン、CBC,生化学検査、血糖値、BNP,頭部CT,赤沈、ECG,胸部XP」を行う。

軽度大球性貧血、CRP:0.5,心電図:左軸偏移、胸部XP:大動脈蛇行(年齢相応)、胸膜肥厚。起立性低血圧なし。左右の頸動脈狭窄なし。

 
鑑別診断「脳脊髄液漏、脳腫瘍、髄膜炎、脊髄腫瘍、・・・」

 その後、うつ傾向あり。発熱37.5度、頭重感に変わる。ESR:50/h

80歳台女性

#1 3年前から徐々に悪化する頭重感、抑うつ

#2 1か月前からの微熱

#3 起床時の手指のこわばり

#4 赤沈・抗核抗体高値

#5 RF.CK基準値内

ここまで、2時間15分で辿り着く。リウマチ性多発筋痛症にしては、赤沈の値や髪結い動作、帯締め動作ができることなど典型的ではないという意見が多かった。

担当医が下した「最終診断」はリウマチ性多発筋痛症であった。プレドニン少量が奏功したそうだ。

初診時とその後の経過を追うことによって変化してゆく症例で難しかった。「頭痛が座位で悪化、立位で悪化しない」で振り回された。

研修医との質疑応答を中心とした笑いの絶えないカンファランスであった。(山本和利)