札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2012年5月18日金曜日

脳卒中・糖尿病腎症


55回日本糖尿病学会年次学術集会における教育講演の2題をまとめてみた。

■脳卒中について
星野晴彦氏
脳卒中の75%は、脳梗塞である。臨床タイプは3つ。アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ脳梗塞、心原性脳塞栓症の比率は1:1:1となっている。(出血性が20%、くも膜下出血が7%)。アテローム血栓性脳梗塞とラクナ脳梗塞とで患者背景に昔ほど差はなくなってきた。肥満、高コレステロール血症、IGTが増えているためである。糖尿病があると脳梗塞発症率は10年で3倍に上昇する。

TIA患者は90日以内に10%が脳梗塞になる。そのうち半数は48時間以内である。ABCD2 scoreが重要。(Dは糖尿病) 
ABCD2 score (エービーシーディー・スクウェア・スコア)
Age :年齢      (60歳以上で1)
Blood Pressure:血圧      (収縮期圧140以上か拡張期圧90以上で1)
Clinical factors :臨床症状 (片麻痺で2点、構音障害のみで1)
Duration :発作持続時間(60分以上で2点、10分から59分で1点、10分未満は0)
Diabetes :糖尿病 (合併があれば1)
以上の合計点0-7点で評価する。

心原性脳梗塞:80%は心房細動から。CHADS2 score>2の人は抗凝固薬の適応。(Dは糖尿病)抗凝固薬を服用していた人の方が起こしても予後がよい。発症を1/3に抑える。

CHADS2CHF(心不全)、HT(高血圧)、Age75(高齢)、DM(糖尿病)は、それぞれ1点、Stroke/TIA(脳卒中/一過性脳虚血発作)は2点に計算される。
合計点をCHADS2スコアという。

新薬ダビガトランを高容量服用群はワーファリン群より結果がよかった。糖尿病患者においても同様の傾向が見られた。この結果から、糖尿病患者で心房細動があれば即抗凝固療法をする方向に向かいつつある。血圧コントロールはもちろん重要である。

多発動脈硬化は脳梗塞のハイリスクである。ASOの死亡の60%は血管死。ABI<0.9は脳梗塞のハイリスク。高齢者、糖尿病が多い。
BP;130/80mmHg, HbA1C<6.9%,LDL<100を目標として、抗血小板薬を用いるとよい。

■糖尿病腎症の進行予防
古家大祐氏

腎症の有病率が増加している。糖尿病腎症が透析導入原因の第一位である、2型糖尿病患者は増加しており、未受診患者も多い。早期診断が行われていないことも問題である(アルブミン尿の測定)。顕性アルブミン尿+GFR低下群は心血管疾患率が高い。アルブミン尿とGFRの把握が重要である。

予防策として
生活習慣;減量、禁煙、食塩・アルコール制限、運動、厳格な血糖管理、RAS阻害薬の使用が言われている。
早期腎症の緩解を目指すことが大切である。緩解が得られれば心血管リスクを75%減らすことができる。HBa1c<6.9% 、アルブミン尿(-)、血圧<130/80mmHg、脂質低値の4つをコントロールする。しかしながら、罹患期間が長い患者に厳格な血糖コントロールは危険である。血糖値、血圧値は個々の患者によって決めるのがエビデンスである。

冠動脈疾患については、血圧は低過ぎると死亡率が高くなるというエビデンスが出て来ている。収縮期血圧は130-135mmHgがよい(メタ解析から)。最近、RAS阻害薬が第一選択薬でよいかどうか疑問が出されている。スタチンは腎保護作用がある(現在、日本でも研究中)。チーム医療で積極的に集約的治療すると(STENO-2 Trial)死亡率が半減する。とはいっても10年で13%は死亡するのが現状である。

たんぱく制限食で腎症の進行を遅らせることができるかどうか調べたが、通常群とで差を認めなかった。一方、活性炭(クレメジン)は腎症の発症を遅らせる。(山本和利)