札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年5月17日木曜日

5月の三水会

516日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。大門伸吾医師が司会進行。後期研修医:3名。 初期研修5名。他:5名。

研修医から振り返り6題。

ある研修医。外来患者のリストを検討。百日咳と抗体価を測定して診断。抗菌薬は治療に必須ではない。高尿酸血症を治療しているが、ザイロリックの用量はいかにすべきか。米国のガイドラインはザイロリックを使用してはいけないというふうに書きかえられている。ペニシリンアレルギーのある人の蜂窩織炎。本当にペニシリンアレルギーがあるのかどうか、突き詰めた方がよい。

88才女性。嘔吐、喘鳴、SpO2低下。脳出血後遺症(VPシャント)。誤嚥性肺炎と診断し治療した。できるだけ延命して欲しいという家人の希望あり。脳出血時と同じ症状なので、MRI撮影を希望(前回CTは異常なしであったがMRIで異常が見つかったから)。脳外科医に依頼してVPシャントのバブルを調整してMRI撮影をした。今後、どう対応したらよいか。コメント:娘の感情を受け入れて、娘を落ち着かせる。今後の未来予測を正直に話して方策を立てる。チームで対応する。



ある研修医。外来リスト。ゴルフで背筋肉離れ、17歳の女子の圧迫骨折、等を経験した。受診患者のうち整形外科手術になる患者は限られている。かなりの患者は総合医が診ることができるのではないかという印象をもった。コメント:外傷、受傷機転を知ることが重要。



58歳男性。感冒後、全身倦怠感と微熱、腰痛。XPで「疲労」と診断。その後、腰痛が悪化し、夜間救急車で受診。ボルタレン座薬を使い、帰宅させようとしたが、体動時の痛みが強いため、入院させた。L3/4に圧痛。LDH:387,CRP:2.3.腰部CTでL2/3に骨融解像。胸部CT,腫瘍マーカーから小細胞がんが示唆された。コメント:Red flagサインを知ることが大事。50歳を超えた患者の初めての腰痛、夜間痛、安静時痛、等。検査の特性(感度、特異度)を知ること。病歴によっては感染症も考慮しなければならない。



ある研修医。小児科研修。入院患者は喘息、肺炎、クループ、胃腸炎が多い。



咳、呼吸困難、咽頭痛で救急搬送された17歳男性。37.4℃、呼吸数:20/分、SpO2:95%。HR:112/分。唾液を頻回に吐いていた。過換気症候群を疑った。夜間のため技師さんを呼ばずXPを撮るのは控えた。心電図、血液ガスは異常なかった。ここで、気胸、肺炎、急性喉頭蓋炎が鑑別に挙がる。XPとCTで縦隔気腫が判明。入院し経過観察となった。早期にXPを撮るべきであった。コメント:病歴を振り返ると、最終診断を教えている。技師さんの負担だけでなく、患者さんのもつ疾患の緊急度、重症度を優先することが大切である。



ある初期研修医。肺腺癌の76歳女性。イレッサ適応であったが使用拒否。疼痛が悪化し肋骨転移、転移多数が判明。そこで、イレッサを使用することを承諾。患者への説明が難しいと感じた。悪い知らせを伝えるSPIKESという6段階方略があることがわかった。その解説(環境の設定、患者の認識を評価、患者の求めを確認、患者に知識と情報を提供、患者の感情に共感をこめる、方略をまとめる)。コメント:うまいと言われている指導医の説明場面を沢山見ること。



ある初期研修医。97歳女性。胸部違和感、息切れ、全身倦怠感で救急外来受診。BP

125/85mmHg,体温:36.4℃、呼吸数:24/分。SpO295%Coarse crackleあり。念のため、心電図、採血、胸部XPで心筋梗塞を除外したいと思った。心電図:IIIaVFでST上昇。XPで肺うっ血像があったが、血液検査結果がでるまで心筋梗塞を考慮しなかった。重篤感がないため、心筋梗塞を考慮しなかった。研修してから初めての心筋梗塞であった。その後、初期治療計画を立てさせてもらい、ニトロ舌下、血管確保、利尿薬の投与を行った。コメント:高齢者、糖尿病、女性は心筋梗塞でも胸痛が出にくい。臍から上の痛みで受診したら心電図を撮ること。歩いてきた心筋梗塞とくも膜下血腫は見逃しやすい。



ある初期研修医。胃痛を訴える28歳男性。救急外来。朝から胃痛。便の色はふつう。整形外科でNSAIDを処方されている。これまで何度も腹痛で受診している。そのため最初はIBSを考慮した。身体診察で心窩部から右下腹部に圧痛。反跳痛あり。血液検査、CTで虫垂炎と診断し、手術にもっていった。初めて最初から手術まで経過を追えた虫垂炎であった。緊急性のある疾患の除外が大切。Alvarado scoreでスコアリングできる。この事例は6点であったため、CTを撮った。疑ったらまずエコー。小児の発熱、嘔吐、腹痛、腹部膨満では常に虫垂炎を考慮する。



年度が変わり新しい研修医が参加してくれ、雰囲気がいい意味で一新された。ヒヤリ・ハット事例から学ぶことは多いと再認識した勉強会であった。(山本和利)