札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年5月13日日曜日

医療市場の開放

グローバル化を目指して、様々な産業分野の市場を国外勢力に解放すべきか、国内産業を保護すべく開放を見送るべきかの議論が盛んである。医療について、日本医師会は開放反対の声明を出している。ここでグローバル化を考える上で参考になる書籍を紹介したい。


『中国化する日本』(与那覇 潤著、文藝春秋、2011年)である。著者は、日本史を専門とする若手研究者である。学術用語を用いずに、若者言葉を交えて解説しており分かりやすく、引き込まれてしまう。

 著者のいう「中国化」とは中国の宋で導入された社会のことを指している。それは今の言葉でいうと「グローバル化」に近い。中国史を1か所区切るなら唐と宋の間で切れるとする立場である。その根拠は、宋時代に入って1)貴族制度を全廃して皇帝独裁政治を始めた、2)経済や社会を徹底的に自由化する代わりに、政治の秩序は一極支配によって維持する仕組みを作った、からであり、その後、新たな要素は加わっていないという

 この中国化という概念で、日本の歴史を論評している。源平合戦は、守旧派勢力の源氏と新しいことをやろうとした(中国化)平氏のと争いと観る。それ以降の時代も全て「中華文明」対「日本文明」という概念で論評してゆく。

 中華文明の特徴は

1.権威と権力の一致(皇帝が政治的権力を掌握)

2.政治と道徳の一体化(政治と道徳の「正しさ」の一致)

3.地位の一貫した上昇(皇帝が行う科挙で官僚を選抜)

4.市場ベースの秩序の流動化(農村共同体秩序の解体) 

5.人間関係のネットワーク化(父系血族コネクションの優先)

この反対が「江戸時代の日本」となる。

 モンゴル来襲、江戸時代、明治維新、昭和日本、「大東亜戦争」、戦後民主主義、平成日本、等、これまでとは違う「再江戸時代化」対「中国化」の概念で一刀両断に論じきってしまっている。

「再江戸時代化」にしても、「中国化」にしてもそれぞれに短所と長所を抱えている。日本はどの方向へ向かうべきなのか?医療はどうあるべきなのか?今、大きな岐路に立っていることは間違いない。(山本和利)