札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年9月14日火曜日

医学教育の理論と実践

ニポポ指導医養成講習会で話題になったので、『医学教育の理論と実践』(John A. Dent/ RonaldM.Harden著:篠原出版新社 2010年)を読んでみた。

構成は、カリキュラム開発、学習環境、教育方略、教育ツールと支援、カリキュラムのテーマ、評価、教員と学生、の7部からなっている。

医学教育について全般的に網羅されているので、関心のあるテーマについて辞書的に使うこともできよう。得意のテーマについて、さらに詳しく知りたいという場合は、簡略にまとめ過ぎているきらいがあり、物足りないかもしれない。私の場合、「EBM」の章がそれにあたる。とは言え、新たに勉強したい場合には大いに参考になろう。

第11章「地域における教育」を見てみよう。地域基盤型医学教育(Community-based medical education: CBME)を紹介している。これは三次医療機関以外の施設で行われる医学教育を指す。「プライマリ・ケア」と「プライマリ・ヘルスケア」と違いを知ることが重要である。「プライマリ・ケア」とは、地域住民がその地域の医療システムに最初に接触することであり、「プライマリ・ヘルスケア」とは、医療提供に関する考え方を意味しており、健康増進や疾病予防を重視し、保健医療計画に住民の積極的参加を勧めるものである。

CBMEの目標を3つのカテゴリーに分けると分かりやすいそうだ。
1. 総合診療について学ぶ
2. 総合診療以外の専門分野を学ぶ(小児科、精神科、内科など)
3. 多数の診療分野を並行して学ぶ(都会から離れた地域の診療所)
オリエンテーションと振り返りが重要。

CBMEを成功させるための実践的原則は、4つ。
1. 医師患者関係(学生を引き込む)
2. 大学と医療組織との関係(地域の医師を大学教官が指導する)
3. 行政と地域との関係(学生による調査や地域開発事業への参加)
4. 個人と医療専門職との関係(メンターとの振り返り)

医学教育を三次医療機関から地域に移すには、変革が必要であることを強調している。医学教育に関わる者にとって手元において役立つ本の一つと言えよう。(山本和利)